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「あ、相手が恋人だなんて…」
「俺の能力は攻撃的なんだぞ!使えるわけねぇだろ!」
「時間は…15分!?冗談だろ!」
「違うと分かっちゃいても、こんだけ似てたら…っ」
「まだバデスちゃんの方が良かった」
「一体どうしろってんだー!!」

「煩ぇな、喚くんじゃねェよ」

キッドの声は妙な響きを孕み、その場をぴたりと静かにさせた。

「テメェの女の弱点ぐらい知っときやがれ」

(流石ユースタス・キャプテン・キッドだぜ)
(この自信…何かあるのか…?)
(さっきの試合で、女の方はなんかすごかったしな…)
(しかしここまで似通った相手に手なんかあげられねェだろうし…一体何が)

「キッドさんんん!!ここでまさかの俺の女発言とか!も、もうツンデレの極意を知り尽くしてますね!プロ!キッドPと呼ばせてください!」
「プロデューサーじゃねェか!!」
ドゴッ

「「「「な、殴ったー!!!」」」」

「あ゛?ンだよ殴っちゃ悪ィのか!!つーかこいつの場合殴っても"参った"なんざ」
「ハァハァキッドさんの愛の鞭…ハアハア」
「ほらな。きめェ!」
ぼかっ
「へぐぁ!でもキッドきゅんの為ならこの痛さだって快感に変えてみせる」「ギャー!キラー!!」

((((か、彼女の方変態だったー!!))))



「ぜえ…はあ……」

キッドは周りを見渡した。どこもかしこも、恋人もどきに圧倒されちまってる。しまいには、こっちの女といちゃついてる奴らまでいる。(あいつらコレ終わったら破局だな)
「ふふふっ、キッドさん、困ってますね」
「…しね」

困ってるかって?たりめェだろ。
(こいつの弱点なんざ最初から知れてる。だが…。)そこでキッドはハッとした。

――「あれは紛れもなく、私が船長から受け渡された大事な、大事な使命!それほっぽらかして逃げ出すなんて真似、私には到底できません!!」

――「私は キッド海賊団のクルーですから!!!」


「…」

あいつがあんだけ根性見せたんだ。
それを無駄には、できねェ。

「……、オイ、」

はい?目をハートにして振り返ったなまえ(もどき)。彼女はカチンと動きを止めた。
プチ、プチ、とシャツのボタンをひとつずつ外しながら彼女の腰を引き寄せたキッドは、オールバックにしていた自分の髪をくしゃりと崩した。

傲慢な笑みを口元に浮かべたキッド。

うなじを撫で上げるようにして、手のひらで彼女の後頭部を押さえた。

「は、え、あっ…その、ちょ」


「昔っから…テメェはいざ迫られると弱ェんだよな。」

「き…キッドさ」

キッドは真っ赤になった耳元に唇を寄せ、甘く噛みながら低く、低く、囁いた。



「言えよ。……どうして欲しい」


―――ボンッ!
「まひりまひたぁ…」
オーバーヒートして白い煙と化した彼女の最期の言葉に、キッドは満足げに鼻を鳴らし、髪を掻き上げた。

「テメェだけが 俺を知り尽くしてると思ったら大間違いだ。…タァコ」

その小さな呟きが誰かの耳に入るより先に、会場が湧き上がった。


「スゲー!あいつ!まさかの色仕掛けだ!!」
「いいぞー!」
「わたし、あのカップル応援するわ!」
「私もっ」
「でもアレ他のとこでも通用すんのか!?」
「がんばれーっ!!」

そんな歓声を遠くに聞きながら、キッドは今頃(鼻)血の海になっているであろう、観客席の一角を思いやって溜息を吐くのだった。

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