◆6◇
「なん、なっ….....なん、え」
ドレスコードを終えたキッドさんはまさかのスーツ姿で、いつものゴーグルは取り払い髪型は後ろに撫でつけたオールバック。Yシャツの肌蹴た胸元。チラリと覗くシルバーも相まって、彼から溢れ出る色気の何たることか……!!
フラリ、意識が遠のいた。
「こ、腰砕けフォーリンラブ」
ぱた
「いやオイ!!起きろ間抜け!!」
ぱったりと倒れた私腕を掴んで引き起こし、キッドさんはぴくぴく頬を動かした。
「テメェそんな恰好で倒れてんじゃねェ!」
「…う、う〜ん。直視できない」
「良いから立て!!ったく」
フラフラしながら立ち上がった私は、下を向いたまま尋ねる。私の鼻血で神聖なる彼のお召し物を汚してしまった暁には死んでも死にきれない。
「キッドさん」
「煩ェ」
「どうして」
「聞くな」
キッドさんはそっぽを向き倒している。聞くなと言われた私は考えた。
――コンテストにやむを得ず出場することは、キラーさんにしか言ってない。となると、伝えたのはキラーさんだ。でも、この「不動のキャプテン・素敵すぎて眩暈がしちゃうよ我らが頭キッド様!」を動かすなんて、一体どんなことを言ったんだろう。皆目検討もつかない。
(ありのままを報告しただけだ Byキラー)
ふわふわふらふらの私の前を、さっき更衣室であった女の子たちの二組のグループが通りすがった。二人はこちらに気付き「あら」と笑いかけてきた。
意識を取り戻した私は今度こそ、満面の笑みでキッドさんの腕に抱きついて言う。
「私のパートナーだって、とってもとーっても素敵な人ですよ!」
海兵だと言っていた方の男の人はキッドさんを見て首をかしげていたが、服装のおかげか髪型のおかげか気付かなかったようだ。
「がんばりましょうね!」
「うん!」
その二組と別れた時、ふと思い出した。
終始無言だったキッドさんに尋ねてみる。
「そう言えばキッドさん、ジュジュ男をご存じ?」
「そんな奴知らねェ」
「そうですか」
「が。ここへ来る途中、ちょっと邪魔だった虫なら一匹潰したぜ」
「虫じゃないですよ、ジュジュ男は!」
キッドはフンと鼻を鳴らし、吹っ切れたように口端を上げて言い放った。
「ともかく、目指すなら優勝だ。分かってんだろうな」
「もちろんですとも!キャプテン・キッド!」
『それでは全員の準備が整ったところで、いよいよ、コンテスト開幕です!』
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