コソコソ

コソコソ

あたりから向けられる視線視線視線。ルシウスがそれをものともしなくなったのは、彼女と勉強を始めて10分程経った頃だった。

「いいか、干しイラクサと砕いた蛇の牙、ゆでた角ナメクジ」
「気持ち悪」
「黙れ。これらを調合してできるのは、おできを治す薬だけだ。問題を見ろ!英語が読めるか?」
「馬鹿にしやがって。問われているのは脱狼薬の作り方です!」
「それは分かっているのに、どうして、間違えるんだ」
「だってほら見てルシウス、私おでこにニキ…あ、まちがえた。想いニキビができちゃって」
「言い直すほどの事じゃないしそんなかなり個人的な理由で答えないで貰いたいものだ困ったおバカさんめ」
「…目がまじだ…こわい」


ルシウスは悟った。悟った、というか再認識した。
彼女の勉強の出来なさを。


「まったく(我が君は)どうして貴女(のような頭のよろしくない、バカの更に上を行くような人間を屋敷に匿い、よい生活をさせてやり、敵陣営であるホグワーツにまで送り込み、思いつく限りの好き勝手を許してやっているのか。私には甚だ理解しかねます。しかも本人はこの待遇の良さにそこまで気付いてないときた。まったく、本当にどうして貴女)って…そうなんでしょうね。」
「どうなの!!?」
「いえ、何でもありません」
「今空白の部分明らか失礼のオンパレードだよね!読みにくいかなっていう誰かさんのちょっとして優しさで色まで変わっちゃってるもの!」
「なんのことやら」

「なんか騒がしいな。」「…あ、お前まだいたのか!」

「ジェームズ(仮)とシリウス(仮)!!」
「「いや違うけど」」


私とルシウスのいる談話室の一角に近付いて来たのは、私をここへ入れてくれた二人組だった。

「グラスにスパニエル。お前達クディッチの練習はどうしたんだ?」
「さっき終わりました」
「(俺ら名前適当だな…)」
どうやら彼らはルシウスの後輩らしい。
私は手を止めて二人を見上げた。

「ルシウス先輩はもしかして…この、悪しきグリフィンドールの女子生徒とお知り合いですか?」
ジェームズ似のグラスが言い、隣でシリウス似のスパニエルがせせら笑った。

「…」
私はすくっと立ち上がって横に大きく手を広げると、二人の横っ面をバチンとひっぱたいた。
うん、ごめんね。ジェームズ、シリウス…

「やっぱ全然似てないや。」


確かに君らは悪戯ばっかりするけど、こんな冷たく笑ったりしないね。
こんなふうに、回りくどく陰湿に人を馬鹿にしたりしないね。


でも、セブルスに対する態度は、今のこいつらに少し似てたから。…今度そういう展開があったらちゃんと止めるよ?うん。今決めた。

「…なまえ」

ルシウスの嘆く様な声を聴いて、私はべえっと舌を出して見せた。

「だってムカついちゃったんだもん」
「すぐ手を出すなんて、淑女にあるまじき行為だぞ。私は報告義務があるというのを忘れるな」
「すまんすまん」

おざなりに謝りながら、呆然としているスパニエルと怒りをあらわにしているグラスに向き直る。
今や、スリザリン寮の談話室にいる全ての生徒達の視線は私達に集まっていた。(…さっきからだけど。)

「…」
さて。
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