魔法史の授業は面白くないと僕も思う。だから横でジェームズとシリウスが魔法で作った折り紙の蛙を、スリザリン側に飛ばしているのを見て笑う。いつも真面目なリーマスもこんな時はクスクスと笑っている。
「…?」
僕はふとなまえの方を見た。

この前転入してきたなまえは、もうすっかりグリフィンドールにも僕たちの仲間としても馴染んだ。
シリウス達のようなカリスマ性も備えているんだろうと僕は良く思う。
臆病で小さい僕から見たら、やっぱりなまえも憧れの対象だった。

その、いつもなら率先して授業を離脱する彼女が、今日は何やら一生懸命羊皮紙に文字を綴っている。かと思えば時折斜め上を向き、そしてまた書き始める。
教科書を写しているわけじゃなさそうだ。
(なにしてるんだろう)
後で聞いてみようかな。





「我が君」

執務室の机の上に静かに置かれた便箋。ヴォルデモートはそれを裏返し、差出人の名前を確認するとその死喰い人を下がらせた。

「…」

全く何が書いてあるか想像がつかん。
眉を寄せながら便箋を開けば、ミミズの踊るような文字がいくつも連なっていた。(また「すまんw」などという一言だけだったら制裁を下しに出向くつもりだった)


『親愛なるヴォルデモートさんへ。親愛なるなまえより』

こいつ手紙の書き方がまるでなってない

『私は今日手紙を書いてみました。今は魔法史の時間です。フィリップ先生のヒゲはもじゃもじゃです。ヴォルデモートさんの在学時代にはいなかった先生だから、一応挿絵をつけときます』

何だこのモジャモジャは
どこが顔だ


『手紙を書いたのに特に理由はありません。私は楽しくやってます。ちょっと肥えました。この前ヴォルデモートさんが暇つぶしに会いに来てくれたのは、正直嬉しか

1113年 魔法商業同盟締結
1119年 魔法生物規制管理部の不正発覚
 動物課「ドラゴンの研究および制御室」管理長リーディアズ・ドライブッチ・ゲルゲインによる新種のドラゴン捕獲の報告が偽装であることが判明。それに対する魔法省の見解は』

???

『……今横でフィリップ先生が止まったから、手紙部分隠してちょっと教科書写しました!』

そういうことか。
あの愚図、真面目に授業を受けろ!

『あたしえらい。冷や汗ぱねー!あ、そうだった続き。―――ったです。でも「いつでも帰ってこい」何て言われたら優柔不断な私は決めかねるから、ヴォルデモートさんが迎えに来てくれたら帰ろうかな。って思ってますので、どうぞそのうち迎えに来てね!P.S.来る前に手紙ちょうだい!荷仕度するから\(^o^)/じゃあまたね。なまえ』


「…自己中娘め」
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