ゴホンと咳払いして、今の一分を無かったことにしたらしいルシウルは仕切り直した。よくやったルシウス。


「我が君はあなた様を大切に思っていらっしゃる」
「、え」
「お分かりになりませんか」
「…や、そりゃさ、ちょっと待遇いいなーくらいには」
「普通だったらすでに130回は死んでます」
「結構リアルな数字キタ」
「だからいいですね、もっとご自身を大切になさってください。寮の窓から箒で飛び下りたりなどせず」
「何故バレた!」
「池の巨大イカをキャッチ&リリースしたりせず」
「だから、何故バレた!本編にすら出てないのに!」

差し出されたままのルシウスの手をベシッと叩く勢いで取ったにもかかわらず、ルシウスは澄ました顔で続けた。


「危険な真似は控えていただきたいものです」
「危険な女でゴメンネ!」
「ちょっと喜んでる意味は分かりかねますが…いいですか?あなた様に何かあれば、まず私の命はないでしょう」
「き、きさま保身のために」
「そういうことです」
ぐいっと引き上げられて、私はむすっとしたまま廊下に立つ。
そろそろ授業の支度をしなきゃいけない時間だ。だがしかし腹立つ。


「こうなったら…ポリジュース薬飲んでルシウスに成りすまして、ホグワーツ中の女子片っ端からナンパしてやる」
「なまえ様…」
「『ヘイ彼女!オイラと池で巨大イカをキャッチ&リリースしようぜチェケラー!』って変なナンパのしかたしてドン引きさせてやるぅうう、あべしっ!」
「それ実際にやったら絶交しますよ」
「ごめんなさい!」
ルシウスの野郎調子に乗りやがってぇえ…
「…(でも)」

でも、あの貴族ヤローは気付いてないけど
「絶交」って言ったもんね。
それってつまり
友達として、認識されてるって、そう思ってもいいんだよね…!


「何です、急にニヤけて気持ち悪い」
「黙れだまれー!」
「……さて。そろそろ時間ですね」

向こうからジェームズ達が歩いてくるのが見える。ルシウスは気持ちを切り替えて、冷たく言った。その時の効果音を付けるとしたら「キリリッ」だ。うける。

「寮への道は分かるな」
「バカにすんなよ」
「ならいい。さっき言ったこと、くれぐれも忘れないように」

踵を返して遠ざかって行くルシウスの背中に向かって、にんまり笑った私は声を投げる。

「ご忠告ありがとう。ルシウス先輩に、あんまり心配かけないように心がけます」
「なっ……私がいつ」
「見えない所での保証はしないけどね」

振り返ったルシウスに手を振って、ジェームズ達の方へと向かう。
(そう。今日はまだ始まったばかりだ!)

後ろで唸ってるルシウスにバレないように、どうやって悪戯しようかな。
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