窓を叩く強い雨の音で目が覚める。
目を擦りながら外を見れば今日の天気がかなり悪いのが見てとれた。

「……うわ、今日雨じゃん最悪髪はねる」
「寝起きの第一声がそれが」
「うわ!卿いつからそこに……てかレディの部屋にノック無しで入るってどういう了見ですか!」
「すまん。完璧なカミングアウトだった」
「謝る気0か!」

こんな私でも、卿に言ってみたい事やってみたい事なんてのはある。
例として挙げてみるなら「仕事もせんと何ぷらぷらマグル狩りしとんじゃあ!」これは確実に言ってみたい言葉ベスト3に入ってる。言ったら殺されそうだから言わないけど。


「あ痛っ!な、なな何でぶったんですか」
「私に対して失礼なことを考えただろう」
「…ハッ!さては開心術!?」
「誰がなまえ如きにそんなものを使うか。お前は顔に出しすぎだ阿呆め」
「朝からこの罵倒の数々!私今日一日持ちませんよこれ」


ヴォルデモートさんは理解すべきだ。そのひと叩きによって私の中のどれだけの脳細胞が死滅しているのか!自分はIQ2億だから良いだろうけどあたしはもともと脳足りんなんだよ!これ以上減らしてどうすんですか。てかIQ2億ってでかすぎてわかんねー!


「百面相してるとこ悪いが、食事の支度が済んでる。早く来い」
「シュガートーストとかぼちゃジュースじゃなきゃ行きません」
「太り死ね」
「ぼそっと不吉な事言わんといて!」
「…ルシウスが要望のままに作ったそうだ。早く行ってやれ」
「わーい!」

ルシウス最近私の食のスタイル分かってきたな。いいことだ!うんうん。
独り大きく頷きながら廊下を歩いていれば近くでシューと空気のなるような音が聞こえた。私の頭にぽっと浮かんで消えた単語。ば、か。


「たかが蛇にまで馬鹿にされた!まだ起きてから数分しか経ってないのにィイ!!」
「それほど貴様がアレだということだろう」
「アレってなに!いや良いです言わなくて!」

あのクソ蛇次会ったら玄関のくさびれたマットに巻きつけて廃品回収に出してやる!キイ!




「おはようございます、なまえ様。我が君」

綺麗なシルバーブロンドの髪を脇に流してルシウスが一礼した。そしてその状態で固まる。限りなく嫌な予感がルシウスを襲った。

「リクタス・センプラ!」
「、プロテゴ!」

「…タラント・アレグラ!」
「シレンシオ」

一発目の魔法はルシウスに向けて。二発目はヴォルデモートに向けて放つ。だがどちらも妨害され挙句「黙らせ呪文」によって口を封じられてしまった。やっとこさ口が解放されたのはゲンコツを一発お見舞いされた後だ。


「何のつもりだ」
「死ぬほど笑い続けるルシウスとかクイックステップを踏む卿とかが見たくて……。すいません嘘ですムシャクシャしててやりました。初犯なんです。いや、前科とか無いですほんと勘弁してください」
「私はともかく我が君にまで杖を向けるとは」
「はい…反省してます。今度からはルシウス限定にします」


ぼこ、もういっこタンコブができた。無力な小娘にこんなことするなんてヴォルデモートさんつくづく紳士じゃないな。
思わず呟いた私のおでこに今度は強烈なデコピンが飛ぶまで後僅かだったりするわけだが、それはまた別の話。今確実に言えること、今回のお話のタイトルってもう「暴力反対!」に限るってこと。
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