「小さくなった……だと?」 「ご覧の通り。見てこのモミジみたいなおてて。……かわいい」 「……俺様は忙しい。どうしてお前は平穏無事に毎日を過ごせんのだ」 「おれさまの隣があんぜんだったことあるか?(妖笑)ってこの前卿言ってひででででで!!?」 「私は、昨日、お前が起こした『飛び火する花火』の処理で忙しいんだが???」 「ごめんらひゃひ!」 マジでブチ切れる五秒前みたいな顔してた。あぶないあぶない。 私は小さな足で普段の2倍程あるソファによじ登り、卿の隣に座った。卿の何とも言えない顔たるや。 「誰にやられた」 「ほむぬ」 「……あ?」 「決して。誰にも」 そんな質問が来ることなど予想だにしていなかった私はつとめて真顔を試みた。 私にちょっとした悪戯をしただけで殺されるなんてベラトリックスもたまったもんじゃないだろう。私も見たくないし。 卿が目を逸らす私の頬を片手で掴み、自分の端正な顔を近付けた。 「早く吐け。楽になるぞ」 「悪役みたいなせりひゅ」 「大方ベラかそのあたりだろう?」 「ちがいまひゅ。名前の知らないデスイーターれした」 今の嘘は上手くやれた。 私の頬を離した卿が、顎を撫でながら首を傾げる。わ、その仕草なんか色っぽいズルイ……と私の思考は斜めに飛んだ。 「じゃあそいつを探してここへ連れてこい」 思考戻ってきた。 「やです。目の前でバラバラ死体は見たくありません」 「殺すなどと誰が言った」 卿が怪しく笑う。 「私の代わりになまえに罰を与えてくれたのだ。……褒めてやらねば」 「はい嘘ー。その間がなんとも言えずブラックー」 「大体なぜ庇う。たとえ殺したとしても、お前の事をよく思わん奴が一人死ぬだけだ」 「だから死体は……え、私のことよく思わない人っていっぱいいるの?」 「むしろ居ないと思ってた事に驚きだ」 え ええ〜 ショックなんですけどー……。 地味にー……。 ホグワーツじゃ『なまえの近くに人混みあり』で鳴らしてただけあって超ショックー! 「疎まれて当然だと分からんか」 分からん、こともない。 ここは卿の城。 ここに居るのは卿の部下、ではなく「下僕」なのだ。 「俺様から無償の寵愛を受けている貴様が、邪魔でないものなどいるはずもない」 ヴォルデモートさんが綺麗な顔をくつりと歪めて笑う。 無償の寵愛……耳慣れない言葉だ。 あとでルシウスあたりに図解して説明させよう。 「それで卿、わたしのこのカラダ治せそうですか?」 ヴォルデモートさんは私のことを今一度眺めたあと「そうだな」と僅かに考えるような間を置いた。 「昔そういった呪文が載る文献を見た覚えがある。調べておいてやろう」 闇の帝王……めっちゃ頼りになる……。 そういった文献ということは、若返りだとか不死の呪文だとか、きっとそういうことだろう。卿の企ては知ってるから驚かない。 「宜しくお願いします!」 「それで、制裁はどうする」 「いいです」 私はにやりと、悪いことを考えている時の卿を真似て笑った。 「私のやり方で仕返ししますから」 ← top → |