始まりの唄

ザザザァ、


ザザザァ……


「…」


潮の香りがする。うっすらと瞼を開けると、目を刺すような刺激に思わず眉をしかめた。(ぐう…眩しい。)
やがてそれにも慣れ、何度か瞬きを繰り返すうちに目の前に広がっているのが空だということに気が付く。すばらしい快晴だ。
あ、そうだった。昼休みだから中庭で昼寝してたんだっけ。
眠る前はちょっと曇ってたけど、いやぁ晴れましたなー。ンーっと伸びをしながらそんな事を考える。

「んー・・・気持ちー」


午後一番の授業は確か魔法薬学だったな。あ、ヤベ、宿題やってないや。グリフィンドール減点されちゃうかな…。や、待てよ。セブセブに可愛くお願いすれば見逃してくれるかもー…ってこれ10回やったけど1回も成功しなかった作戦だったっけ。あーあ。


ザザザァ……


さっきから何だこの音。私はのったりと体を起こす。
まず視界に飛び込んできたのは、私が眺め倒していた空より遙かに青く澄んだ色の、大海原。そして水平線。
「…え」
投げ出した足に視線を向けると、靴と靴下とローブの裾は打ち寄せる波にザバザバと浸されていた。

「フ、フレッドー…ジョージー……?」

実は目の前のこの景色はただの写真で、波の音も「自然のやすらぎ100選」とかから引っ張ってきたただの音声で、という展開を期待して二人の名前を呼ぶ。
しかし私の耳に届くのは相変わらず満ち引きする波の音だけ。

「な、なんだこれ!」
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