「…今回も、間に合わなかったか」 呆然と立ち尽くす後ろ姿を見たのはもう四度目だろうか。 今度こそ今度こそと変えようとして、でも変えられた事なんて一度もない。 見慣れてしまった悲しい背中が振り返る。 「家康、」 「ど、く、がんりゅう…」 大きく目を見開いた家康の手は紅く染まり、傍らにはその紅の持ち主であろう、白銀の髪。 「全部……思い出したんだ」 「…そうかよ」 「三成は、また、ワシが、殺してしまった」 関ヶ原の戦から、もう何百年と経った。 過ぎ去ったことでありながら、家康と石田はずっと輪廻の業につかまっている。 関ヶ原。 二度目は幕末。 三度目は第二次世界対戦。 そして今マフィア同士の抗争。 その度家康は石田をその自身の手で殺めてきた。 家康がそれを思い出すのは、全てが終わった後。 がくり膝から崩れ落ちた家康の視線の先は石田。 真っ赤に染まった石田は、暴言を吐くことも、手にした銃を放つこともしない。 ただぴくりとも動かずに静かに横たわっている。 つまりは、死んでしまったのだけど。 「もう…こんな思いは嫌だと…今度こそ三成と生きたいと、思っ……!」 「…ああ」 今世でも凶王のような男だったけれど、人間というものはどんな奴でも紅い血が流れているらしい。その証拠に、石田の血はいっそ悲しいくらいに紅い。 そんな石田の血に染まった掌を気にすることなく、家康は頭をかかえ、噛み殺して泣いた。 「…っ、くぅ……、三成、三成、今度こそ……っ!!」 痛々しいその姿でさえも、 見たのはこれで四度目だった。 この愚かさに気づけるのはいつなのだろう、彼はそう言いながら涙した こんな運命しかない、なんて 信じたくないんだ。
text by 1204
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