03
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「リンク……不思議、何だか懐かしい響き……」
 
 
 
そう言って、ゼルダは目を伏せる。
彼らは初対面の筈だ。
なのに何故ゼルダは懐かしがるのだろう。
"変なお姫様だな"なんて思いつつ、リンクも少しだけ懐かしいと感じていた。
 
 

「じゃあリンク……今からこのハイラル王家だけに伝わる聖地の秘密を貴方にお話します。誰にも言ってはいけませんよ!」
「う、うん」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



「ん……」


目を覚ますと、彼女は見知らぬ場所にいた。
ここは何処なのか……そして、自分は何者なのか、彼女にはわからなかった。
唯一わかる事は、自分の名が“フォルテ”という事、“黒い人”の事だけ。
他のことは何もわからない、所詮“記憶喪失”というものだ。
何かを思い出そうと悩んでも、何も浮かばない。
黒いモヤが掛かったような、そんな気分だ。
自分がなぜ此処にいるのか考えるだけ無駄だ、取り敢えず彼女は部屋を出る事にした。
此処にいてもしょうがない。


「……綺麗な青空」


ふと空を見上げる。
雲一つない青空。
太陽の上り具合からみておそらく今は昼時だろう。
辺りを見回せば賑わう街並み。
奥には大きな城があった。


「どうしましょう……」


当ても無く、フォルテは大きな建物の方へと足を進めた。
そこは時の神殿。
聖剣が眠る、聖地への扉。


「静か……何かしら、ここ?」


賑わう広場の側にあるにも関わらず、広場の声はここには届かない。
自分の声が神殿内に響く。
ふと神殿の隅を見ると、真っ黒な影がこちらを見ていた。


「っ!」


驚いて一歩下がる、だが影への恐怖心はない。
何故か懐かしさを感じる。
あの影を、“彼”を知っている、記憶がなくとも心が彼を覚えている、そんな気がした。


「……フォルテ」
「あ……」




“必ず迎えに行くから”


そう言って、影は消えた。
暫く影のいた場所を見つめていると、背後から声。


「いた!リンク、あの女の子いたヨ!」
「やっと見つけた!宿に行ったら姿がなかったから探したよ……」
「……貴方、は?」


そこにいたのはリンクと呼ばれる、自分より幼い少年だった。
……何処と無く、先程の影に似ているのは気のせいだろうか。
少年は慌てて彼女に近づき、“怪我の方は大丈夫?何処も痛くない?”と心配してきた。


「怪我……?私は、怪我をしていたの?」
「そうだよ!血が凄くて心配だったんだから!」
「そう、なの……貴方が、助けてくれたのね。ありがとう」


そう微笑むと、少年は嬉しそうに“どう致しまして!”と笑った。
自分が怪我をしていたのは知らなかったが、彼には助けてもらった恩がある。
ならば恩返しするのが普通だろう。
だがフォルテのポーチの中には小さな謎の結晶と、少量のルピーだけ。
これでは何も返せない。


「ねぇリンク、彼女の無事も分かった事だしそろそろ炎の精霊石を探しに行きましょう!」
「そうだね。じゃあ、オレ達はこの辺で」
「っ待って!」


その場を去ろうとする少年の服をつかみ、引き止める。


「あの、助けてもらったお礼がしたい、の。私に、何か手伝えない……かしら?」
「え、でも危ないし……」
「自分の身は、自分で守る、から……」


“だからお願い”と頼む。
少年は悩みに悩んだ末、旅の同行を許可してくれた。
これで恩返しが出来る、そう思うとヤル気が湧いてきた。


「じゃあよろしくね。オレはリンク」
「ナビィヨ!アナタは?」
「私は、フォルテ。これからよろしく、ね。リンク、ナビィ」


こうして、新たな仲間“フォルテ”が加わった。






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