01
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「はぁ……はぁ……っ」
日もすっかりおち、闇が支配する深夜の時間。
黒いローブに身を包んだ一人の少女は平原を走っていた。
少女の後ろには何体ものスタルベビー。
少女が追われているのは一目瞭然だった。
少女とスタルベビーの距離は次第に縮まり……
「……っ!!」
少女は背中を引っ掻かれた。
かなり深く抉られ、バランスを崩し
ザプン……ッ
川へと転落し、そのまま少女は意識を手放した───
「わぁ……!!」
ここはハイラル平原。
コキリ族特有の緑色の服を着た少年、リンクは初めて見る"外"に感動していた。
「凄く広い……!これが外の世界なんだね!」
「Hey、リンク!感動してるところ悪いケド、早くゼルダ姫に会いに行こう!」
「うん!」
リンクの頭上をふよふよと飛ぶ水色の妖精、ナビィの言葉に頷き、遠くに見える城を目指して歩き出そうとした時。
────誰か……
「え……?」
リンクの耳に、誰かの声が届く。
か細く、今にも消えてしまいそうな声。
「どうしたノリンク?早く行かないと日が暮れちゃう!」
「今、女の子の声がした」
「女の子の?ナビィには聞こえなかったケド……」
「こっち!!」
「あっ、待ってヨ!」
突然走り出すリンクを慌てて追いかける。
向かう先は小さな川。
近づくにつれ、人影が倒れているのが見えた。
「リンク!人が倒れてる!!」
「っ!」
急いでその人物の元へ駆け寄る。
リンクが抱き上げると、背中から血が流れていた。
「キャッ!リンク、その人怪我してるワ!」
自分の手にベッタリとついた血を見て、リンクは小さな悲鳴を上げる。
急いでポーチを漁り、布を取り出して傷口を布で塞ぐ。
が、ローブが邪魔で上手く手当が出来ない。
「もー!この黒い布邪魔!!」
リンクがローブを脱がすと、血で滲んだ白い服。
綺麗な空色の長い髪。
ローブの人物はまだあどけなさが残る少女だった。
傷口が痛むのか、整った少女の顔が歪む。
リンクは布で少女の背中の傷口を抑え、ポーチから赤い液体の入ったビンを取り出した。
少女を抱き上げ、先程取り出した赤い液体──赤いクスリを少女の口元へ近付け飲ませる。
痛みが和らいだのか、少女の顔色が少しだけよくなった。
「薬草……は手元にない。どうしようナビィ!クスリだけじゃこの傷治らないよ!!」
「落ち着いてリンク、血は止まったみたいだし後は傷が開かないようにしたら大丈夫ヨ!」
「本当?でもこの布以外抑えるのない……」
「アンタら、そこで何してるだーよ?」
声のした方を見れば、ふくよかな体型のおじさんが馬車を引いていた。
荷物が乗っているので、恐らく何処かへ運搬中なのだろう。
「血……?もしかして怪我してるだーよ?」
「この子、背中に怪我してて、やっと血が止まったけどオレ、どうすればいいかわかんなくて……!おじさん、この子を助けてあげて!!」
「落ち着くだーよボウズ。血は止まってるし、宿とかで休ませれば大丈夫だ」
彼がそう言って笑うとリンクはほっとし、笑みを浮かべた。
ふくよかなおじさん──タロンが少女を城下町にある宿で休ませようと提案し、リンクも一緒に荷台へと乗せてもらう事に。
初めて行く城下町にわくわくすると同時に、彼女の事が心配でそわそわする。
「この子、大丈夫かな……」
「きっと大丈夫ヨ。タロンさんもその内目が覚めるって言ってたじゃない」
「……うん、そうだね」
「おーい、そろそろ着くだーよ」
タロンのその言葉にリンクは荷台から顔を出す。
目の前の風景にリンクは「わぁ……!」と小さく歓声を上げた。
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