玄関口に気絶した男を放り込む。
ドサッと鈍い音がたった。
男の上に跨がり、コードで縛って自由を奪う。
一段落した私は溜め息をついた。
私の目の前で気を失っているこの男は、此処数週間私をつけ回していたストーカーだ。
先程、仕事帰りに家先で襲われたので返り討ちにしてやった訳なのだが…
はてさて、これから一体どうしよう。
とりあえず、警察に突き出す事も考えて色々証拠を押さえとこうか。
携帯を取り出し、男のフードを捲り写真を撮る。
意外にも、なかなかに端正な顔立ちをしていた。
「んっ、ぅ…」
軽く叩くと、微かな呻きが零れた。
そっと目を開く男。
「おはようストーカーさん」
男は視界に私を捉えた途端、目を丸くした。
「は、えッ、カイリさん!?どうして…って、あれ、何これ縛られて…?」
「軽く拘束させて貰ったよ。今から、私の質問にだけ答えてくれるかな」
そう言ってにこやかに微笑んでやる。
すると、何が嬉しかったのか男は表情は明るくして、威勢良く返事をした。
「まず、名前は?」
「板西、板西和也っす」
しっかりボイスレコーダーを起動させて、音声をキャッチする。
「次に、最近私をつけ回してたの君だよね。なんでそんな事したの?」
「…好きだったから、その、カイリさんの事詳しく知りたくて」
「そう。じゃあもう一つ。さっき私を襲った理由は?」
「子供作っちゃえば、カイリさんは俺のもの的な?」
ハハッと苦笑しながら、すんなりそんな事を言う彼に腹が立ち、思わず股関を踏みつける。
「ひ、ぎっ!?」
「へぇー、アンタそんな事しようとしてたんだ。ないわぁ。」
使い物にならなくなればいいのに。
「い゛、や゛めっ」
「いっそ切っちゃう?」
もしもの時ように用意していた折り畳み式ナイフを、ポケットから取り出して見せつけると、板西の顔が青ざめた。
「た、助けっ」
なんとか拘束を解こうと、身を捩るが、私が念にも念を入れ何重にも巻いたソレはびくともする筈がない。
涙目で必死こいてる板西君を見て、私は少々の愉悦に浸った。
ある程度満足し、感情が落ち着いた所で未だ身悶えているバカに声をかける。
「冗談だってば、切らないよ」
「き、切らない?ほんと?」
「うん本当」
板西君の上目使いに若干キュンとしながらも、優しく返事を返してやったが、あれ、なんかこの子結構可愛いかもしれない。
「…ところで、板西君はあれだよね。念の為聞くけど、別に私が君の事好きだとかそういう勘違いはしてないよね?」
「へ、あぁ、してないっすよ。してたら普通に告白してます」
「いやしてなくても告白しなよ、こんな形じゃなかったら私もちょっとは考えてたぞバカ」
「え、マジっすか!?」
「過去形だけどね。誰がストーカー兼レイプ未遂犯と付き合うかっての」
そう吐き捨てると、板西君は子犬のようにシュンとしてしまったが、気にしない。
「それじゃ今からどうしようかな。見た所、単なる馬鹿そうだし、警察に突き出そうか」
「え、ちょっ、警察は勘弁して下さいよ」
「うるさいこのレイプ未遂犯めが」
「うぐっ」
「…あーでも、まぁ条件によっては考えてやってもいいかも。生涯私に近づかないとか」
「絶対嫌っすけど」
「おま、反省してないでしょ。本当にその粗チン切り落とす?」
「や、だってカイリさんの事大好きなんですもん、そんな諦められる筈ないじゃないっすか!」
真剣に此方を見据える板西君の目。
「じゃあ何、どうするの」
「…つ、付き合って下さい」
「言ったよね、アンタと付き合う気はないって。つか、私、彼氏作る気ないし」
「…なんでっすか」
「攻めがいいから、下になるくらいなら付き合わない」
「攻め?」
何も分からないと言った風に、板西は首を傾げた。
もういっそ、このまま軽く犯してしまおうか。
警察には引き渡せなくなるが、引いて近寄らなくなる筈だ。
ベルトに手をかけ、ズボンを剥ぎ取る。
「へ、ちょ、カイリさん何してんすか!?」
「ナニしてんの」
流石に初対面の男性のモノを、直に触れるのは嫌なので、下着越しにやんわりと揉む。
「ひゃ、あっ」
顔を真っ赤にして、快感に耐える板西君。
「気持ちいい?」
「は、いっ」
そそり立った陰茎を、撫であげたりして扱いていく。
「ぁっ、だめ、ひッ」
身体をブルッと震わせたかと思うと、甲高い声を上げて板西は果てた。
「早漏だね」
「言わないで下さい…」
そう言って赤くなった顔を逸らす板西。
「まぁ兎にも角にもこれで分かったでしょ。もう私に金輪際近寄らないで」
「い、嫌っす」
「は!?」
「し、下だったらいいんすよね。俺下でいいですからっ」
「…こ、後悔しないの?」
「しません」
「絶対?」
「絶対っす。だからカイリさん、俺と付き合って下さい」
ストーカー男と痴女の馴れ初め
(か、考えとく…)
(そこは快くオーケーして下さいよ!?)
●●
prev|next