「沖田君、」

と一言。それだけ言われたのが12月。今は7月。その間、特に何も起きてはいない。一体彼女はあの時、何を言おうとしたのか。こうも月日が経っちまうと本人にそれを問うというのは中々難しい。

「うげー何だと思いやすか、土方さん」

「まんまだろ」

「あ?」

「頭悪いって言、」

「土方さんの携帯メモリーは俺が預かりやした。金輪際、誰とも連絡はとれねえ覚悟をしてくだせえ」

「え、えー…」

12月のあの時、彼女は確かに何かを言おうとしていた。俺も何故こんなことを数ヶ月も気にしているんだろう。すぐに本人に聞けば良かったんだろうけど、あいにくそれは無理。

「面倒臭え」

「お前のが面倒臭えわ!」

「銀八なんとかしろ。こいつずっとこれじゃあ俺のメモリーが帰ってきやしねえ」

「なに、メモリーって」

「ときメモのセーブデータでさあ」

「総悟、傷の上塗りはやめてくれ」

屋上で大の男三人が不毛な事に労力を費やす。笑えねえ。

「そいつって、あれだろ。隣の服部のクラスの奴だろ」

「知らねえ」

「沖田君、君は悩みを解決する気はあるのかな」


「ありまさあ」

気はあるけど、動く気はない。


「つづく」



BGM by
カミソリソング/sherbets


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