見慣れない天井。
微かに香る薬品の匂い。
規則正しい電子音。
重く動かない体躯。
鈍く働かない思考。
清潔そうな白色。
ぼんやりと霞む視界の向こうでこちらの顔を覗きこむ女性と目が合う。「意識が戻った!」とか「今、先生を呼ぶからね!」とか色々慌ただしい声がする。こちらに話しかけているらしいが、幾分か音が遠い。
パタパタと遠のいていく足音を聞きながら薄く開いたままの瞳で何度か瞬きをして大きく息を吐く。肺が痛い。腕が痛い。足が痛い。体の節々が痛い。自分の体じゃないみたいだ。痛みと共に覚醒していく思考の中でまた息を吐き、脱力する。
ああ…生き残ってしまったんだ、と。