SS部屋 | ナノ
立場逆転パロ静帝の続き

2011/03/20 19:57

「帝人さんも結構バカだよねえ」
「…五月蝿いよ、臨也君」
 臨也はまるで自分の家にいるかのように寛ぎ、出されたクッキーの箱を膝の上に置き、さくさくと胃袋に詰める。
 臨也の食べっぷりを帝人はソファ越しに見、溜息を吐いた。
「あ、帝人さん。クッキーなくなった。他になんかないの?」
「臨也君、遠慮しようね」
「あの、私、何か作りましょうか?」
「本当?やった」
「ああ、いいよ、杏里さん。気にしないで」
 ぶーぶーと口を尖らせる臨也に、再度溜息を吐いた。
 帝人は普段から溜息を吐くことが多いが、今日は一段と多かった。
 それも、帝人の恋人、平和島静雄に関係している。というか彼が元凶だ。
 帝人は日頃のお礼として、こっそりと温泉旅行を計画していた。だが、静雄はこそこそとしている帝人を怪しく思ったのか、まさか浮気をしているんじゃないかと疑ってきた。さらに温泉旅行についても中途半端にばれ、その静雄の妄想上の浮気相手と行くのではないかと問い詰められ、帝人はキレた。
 帝人からしてみたら、どうしてそうなるんだ、の一点だった。そんなにも僕は信頼がないのか、と。
 帝人は暫く、事務所から家に帰っていない。
 静雄も家から帝人の事務所は近いので、訪ねようと思えば来れるはずだ。
 杏里は心配してくれているが、臨也の反応は楽しそうだ。
「…臨也君って僕のこと好きだったんだよね?」
「うん、まあね。でも俺、モテるからさ。来るもの拒まず、去るもの追わずだから。帝人さんは今、食べるものくれるから大好きだよ」
 遠回しに今は恋愛感情は持ち合わせていない、と言っている。
 まあ、そちらの方が帝人からしてみたら助かるのだが。
「お腹空いたー」
 バタバタと脚を動かす臨也に、帝人は申し訳なさげに杏里に何かを作るよう頼んだ。
 臨也は帝人が池袋に事務所を構えるようになってから、毎日のように訪れている。下手したら静雄より一緒にいる時間が長いかもしれない。
 臨也は情報処理能力が高いので、アルバイトとして雇おうかとも考えている。なんせ、杏里は書類の整理は出来るが、パソコンについてはさっぱりだったりする。
 静雄が知ったら怒るかもしれないが、今は静雄を怒らせたかった。
「帝人君、もうすぐ…」
「ああ、そうだね。臨也君、僕はこれからクライアントに会う約束があるから、それ食べたら帰るんだよ」
「はーい」
 杏里お手製のオムライスを頬に含みながらこちらに目を向けずに手をひらひらと振った臨也に苦笑を浮かべながらもコートを羽織った。
――…しかし、ここまで静雄さんから連絡がないとなると、それほど怒っているのか。まさかまた記憶を消してたりして…。
 それはないか、と大通りでタクシーを捕まえる。乗っている途中、信号待ちで停まってる間にちらりと外へと目を向ければ、丁度窓の外に見覚えのあるバーテン服が見え、思わず身体を隠す。
 静雄も信号待ちのようで、タクシーの真横で眉間に皺を寄せながら携帯を眺めていた。
 静雄はこちらに気付いていないようだが、いつばれるかわからない。車内なのに思わず息を潜める。運転手は怪訝そうにバックミラー越しに帝人を見ていた。
 信号は赤から青へと変わり、何事もなく車は発車した。ふう、と息を吐き、座席に座り直せば、バックミラーに嫌なものが見える。
 振り返れば、静雄が追い掛けて来ている。帝人は思わずスピードを上げるよう言おうとしたが、その前に車は強制的に停められた。
 運転手は平和島静雄に一体何か気の触るようなことをしたかとしどろもどろしていた。帝人は溜息を吐き、財布から札を一枚抜き取り怯えた様子の運転手に押し付けた。
 扉から出れば、早速静雄に腕を掴まれ、身体が宙に浮く。帝人の身体は静雄の肩の上に乗り、俵抱きにされたまま静雄は歩き出す。暴れてもどうしようもないことは心得ているので大人しくなされるがままになる。
 一応周囲の目を気にしているのか、早々に路地裏へと入り、帝人の身体を下ろした。
「…なんですか」
「なんで家に帰って来ない」
「……」
 飽くまで相手が悪いような問い詰め方をされ、帝人はむっと静雄を睨み上げる。
「静雄さんが僕に謝ってくれないからですよ」
「謝るのはお前の方だろ。こそこそしやがって。何を俺に隠してんだよ。言え」
「まさか本当に浮気じゃないだろうな」と言われ、帝人の怒りはリミッターを越した。
 ぎり、と唇を噛み締め、静雄の胸倉を掴む。身長差故にただ掴むだけなのだが。
「もういいです」
 ふんっと胸倉を掴んでいた手を押し出すようにして離し、そのまま走り出す。静雄は追って来なかった。そのことがさらに帝人の怒りを増幅させる。
「どう思う?新羅」
「どう思うって、どうして僕のところに来るの?」
「セルティさんがいないからだ」
 新羅はやれやれと言った様子で肩をひょいっと上げる。
「僕も君達の子供染みた痴話喧嘩に付き合ってるほど暇じゃないんだけど」
「…子供染みたって何」
「だってお互いが意地の張り合いをしているようなものじゃないか。帝人が謝って本当のこと話して、静雄が謝れば元通り。だろ?」
「僕から謝るのは嫌だ。僕は何も悪くないし」
「それが子供染みてるっていうんだよ」
 帝人は唇を尖らせ、紅茶を一気に飲み干した。じんわりと暖かい紅茶が食道を通って行くのを感じる。
「僕から謝るとしても、静雄さんに意趣返ししてからにしたい」
「ああ。一部の記憶を消す薬、まだあるよ」
 帝人は動きを一瞬止めると、机を乗り上げ新羅に詰め寄った。
「なんでまだあるの!」
「前のがまだ残ってるんだよ。材料もあるし、すぐに作れるけど?」
「…」
 そこまでやる必要があるのかと悩む。いや、静雄だからこそやり過ぎ位が丁度いいのだ。
 帝人が頷けば、新羅はちょいちょいと手招きした。大人しくそれについていく。
 奥の部屋には沸騰してもいないのにぶくぶくと泡が沸き上がる液体がビーカーにいれられていた。
「…毒々しいね。ていうか新羅、これどうしたの?君が作ったの?」
「僕はただの闇医者だよ。ネブラのやつらが作ったのを興味本意で買っただけで。いやあ、交渉大変だったよ」
 世間話をするように話す新羅に溜息を吐きながら、液体に視線を戻す。
「…これ、静雄さんも飲んだの?」
「うん。精神安定剤っていったら信じたよ」
「ある意味凄いねそれ」
 毒々しい色のそれに、帝人はひくりと口端を引き攣らせる。
「これを飲めばいいの?」
「ああ、ちょっと待って。それだけじゃ誰を対象に記憶を消せばいいかわからないよ」
「?」
 新羅は引き出しから瓶を取り出す。その中に金色の毛のようなものがある。
「…え?」
「静雄のDNAが必要なんだよ」
 帝人が戸惑っている間にさらさらと液体の中に静雄の髪が投入された。
 ゴボッという音と共に、毛が一瞬で溶けた。帝人は冷や汗しか出てこない。
「あ、そうだ。自分の毛を落としちゃうと自分に対する記憶が無くなっちゃうから気をつけてね」
「いや、待って。これを飲むの?」
「嫌ならいいけど」



途中まで考えて飽きるっていうね!
最近全然文が書けない…


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