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私はあの人たちを「じじ様」「ばば様」と呼び
彼らは私を「フランマ」「イグニス」と呼んだどちらも火という意味らしい。
固定の名前でなかったのは、本名は一人前になってから与えるという習わしに沿ってだからだという。
種は違えど家族になったようでひどくこそばゆかった。

じじ様たちから沢山のことを教わった。
言葉、知識、そして生きるという事を厳しかったけれどその中にある想いを感じることができたので辛くはなかった。
多くを知ることで、また欲が生まれた。
もっと色々な事を知りたい、外に出てみたい、旅をしてみたい。
そう熱く語る私の頭をなでながらじじ様は言った。

焦らなくていい、今よりもう少し賢くなって、もう少し大きく強くなってからのお楽しみだとそれくらい成長したら自分がとびきり良い本名を付けてやると、そう約束を一緒にした。
この約束は終ぞかなうことはなかった。


その日は前触れもなく訪れた。
何時ものように朝目覚め、じじ様達と朝の仕事をし、何時ものようにばば様たちと朝食の用意をして、何時ものように皆で食事をしていた時だ。
何時もの日常に居ない奴らが来たのは。

そこからの事は今でも脳裏に焼き付いている
住処は荒らされ、壊された。
採掘の道具も、鍛冶場も、作った装飾品も石細工も、育てていた植物も、全て何もかも壊された。
立ち向かいはしたが、数も力にも大きな差があった、きっとあの光景を蹂躙と呼ぶのだろう。
そして、私たちには首輪が付いた。

奴らは人狩りを生業とする海賊たちだった。
私は異形のオークションに、じじ様たちは遥か遠くの地へ奴隷として出されることになった。

最後の時
鉄格子の向こうにいるじじ様たちは泣いていなかった、私もなぜか泣かなかった。
まっすぐにお互いを見ていた。
鉄格子をつかむ手は握りすぎて白くなっていた。
じじ様は耐えるように絞り出すように言葉を紡いだ
「私たちの可愛い《イグニス/フランマ》お前にはこの洞窟も、その檻も狭すぎる、だからいつか飛び立てる時まで火を灯し続けなさい」
私は強くうなづいた、それがじじ様たちと交わした最後の会話だった。

周りは奴らの笑い声、汚い騒音、雑音
私は一人になった。

交わしていた言葉がドワーフ語だったのをその時初めて知った、この世には悪というものがあるのも初めて知った