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22


「大変だよドクトリーヌ!!ワポルが帰ってきた!!!」
息を切らして図鑑で見たトナカイの姿になったチョッパーが駆け込んできた。その表情は険しい。ドクトリーヌは「そうかい」と静かに答えるとチョッパーを連れてこの部屋を出ていった。
「ちょっと野暮用ができたみたいだ。あんたたち大人しく寝てな、とくにそっちのチビ」
私を指さして念押しするように「決して、部屋から出てくるんじゃないよ」と言う。
ドクトリーヌはワポルが私を食べたいと思っていることも知ってるのかもしれない。
はいと返事をしてナミちゃんと同じに布団に入る。
それを見て二人は下へと降りて行った。

その後しばらくして船長がさみーさみーとやってきた。
何時もの服でいたので平気なのかと思っていたけれど、やっぱり寒かったらしい。
バサバサと上着を探す彼にナミちゃんが自分のを貸してあげた。
外で喧嘩をしているらしい、サンジも船長も怪我が治ったばかりなので大丈夫かと聞くと
「ああ、二人とも寝てろよ」と余裕な様子でまた出て行った。
「何事かと思っちゃった」と布団に戻るナミちゃんを見て、心配するようなことではないのかなと自分も横になる。
眼を閉じて眠ろうとするが、眠気はやってこない。

【この世に生まれた瞬間に…親に気味が悪いと見放された】

先程聞いたドクトリーヌの言葉が頭によぎる。
向かいのベッドに眠るナミちゃんを小さく呼んでみる。もう寝ていると思ったけど彼女も起きていたようで、「何?」と返事をした。

【あいつはいつでも群れの最後尾を一人寂しく離れて歩いた。生まれたての子供がだよ】

「チョッパー、一緒に来てくれないかな?」
「どうかしらね?こればっかりは本人の意思よ」
そっかとこぼすと、ナミちゃんは私のほうに体を向けた。
「あいつに来てほしいの?」
「ほしいなー」

【悪魔の実を食っちまっていよいよ化け物扱い、もう完全に普通のトナカイじゃないあいつを激しく追い立てた】

即答ねと笑うナミちゃんにだってチョッパー海賊好きなんだよ。と返す。
いつか海賊になりたいと思ってるなら、船長の船でなればいいと思う。
自分はもっとチョッパーと一緒にいたいから来てほしい。

【人として人里におりた。だがその姿もまた完全な人型じゃない】

「それに…」
そこまで話して目を閉じる、自分の事を怖くないのかと不安そうに聞くチョッパーの顔が浮かぶ。

【何が悪いのか、何を恨めばいいのかもわからない。ただ仲間が欲しかっただけなのにバケモノと呼ばれる】

シロ ?とナミちゃんが呼ぶ。気分悪いの?と聞かれ、大丈夫だよと返す。
それに、とさっき話していた続きを話す。

【トナカイでもない…人間でもない…あいつはね】

「そしたらチョッパーもう一人じゃなくなるよ」
一人じゃないのはすごくうれしい事なんだ。味方が居てくれる事は自分は此処に居て良いんだと安心できるんだ。

【そうやって……たった一人で生きてきたんだ】

それを聞いてナミちゃんはシロも知ってるのよね…とこぼす。
「だから一緒にきてほしいなー」
でもナミちゃんの言う通りチョッパーが決めることだもなーとうんうんと考えていると。
それなら、いい方法があるわよとナミちゃんはちょっと意地悪そうに、
「口説いちゃいなさい」
くどく?とよくわからないので首をかしげると
「私と一緒に海に来ててお願いするの。男はね女の子のお願いに弱いのよ」
シロも女の子なんだからそれくらいの技を身につけないとねと笑った。
「戻ってきたらチョッパーにお願いしてみる」

【お前達にあいつの心が癒せるかい?】

もう寝ましょ、そろそろドクトリーヌに本気で刺されるかもと。おやすみなさいと交わして布団の中に潜る。お話しているうちに眠気が来たのか、すぐに眠りに落ちた。
夢を見た、メリー号に乗っている夢だった。
船長が居る、ゾロもナミちゃんもウソップもサンジもビビもカルーもみんな居た。
そこにもう一人姿が見える、あの帽子、角間違いない。
彼もメリー号に乗っていた。
私はその名前を呼ぼうと口を開いて。
「シロ起きて!!寝てる場合じゃなかったわ!」
ナミちゃんに揺り起こされた。ドクトリーヌがいない内に逃げるわよと私にコートを渡す。
いきなりなんでと聞くと。
「言う通りしてたらこのまま三日も拘束されちゃうの!」
行くわよとナミちゃんは音をたてないように部屋の鍵を開けて外にでる。
帽子が見つからなかったけど、隠れながら行くから、いいかと諦めた。私も置いて行かれないように慌てて後を追う。外に出て数歩でナミちゃんが止まって下を見た。
「な………なに?あいつ?」
つられて自分も下をのぞくと。船長でもドクトリーヌでもない人がそこに居た。
「まっはっは、さては麦わらの仲間だなァ…?」
ニィ…と笑うその姿は見るからに味方じゃない顔だった。
今この山に居る人たちを考えて。もしかして、この人がワポルかもとたどり着く。
《君を食べたいと思っている》ドルトンの言葉を思い出す。
隣にいるナミちゃんに「逃げよう早く」と小声で言った。


下手したらナミちゃんも私も一飲みだ…