一般人静雄×芸能人臨也
シズちゃんが熱烈な臨也ファンです、ご注意を!
色々酷い






人は誰しも人に言えない秘密があるはずだ。俺だってそうだ。まさか、部屋にあり得ないほどたくさんの「折原臨也グッズ」があるなんて口が裂けても言えない。臨也のシーツの上で寝て、臨也の抱き枕を抱えてちゅっちゅし、臨也の抱きクッションを見てニヤニヤする姿なんか絶対見られたくない。幽にも、新羅にも、臨也本人にもだ。

中学校でも、男の俳優が好きだなんて誰にも言わなかった。この怪力で既に人から恐れられているのに、これ以上気味悪がられてどうする、と思った。そして高校。いや、まさか。まさか、臨也が同じ学校だなんて!!シャイな俺はキャアキャア騒いでいる女子をかき分けてまでサインや握手を求める勇気なんざ無かった。そんな受け身な俺にも信じられないチャンスが巡ってきたのだ。何も言った覚えはないのに新羅が臨也を紹介してきて、話を聞くと臨也の方から言ってきたらしい。そりゃあもう喜んだ。俺の力に興味をもって、と知って初めて自分の怪力に感謝した。
まぁ、ここまではよかったのだが。バカな俺は変に気を利かせて、ここで暴れた方が気に入られるんじゃないか!と考えた。
後はお察しのとおり。
さんざん追いかけ回し、チンピラをふっかけられてはまた追い回していた。正直、大好きな臨也を追いかけ回すのを楽しんでいた節もある。
でも、高校を卒業したら臨也は本格的に俳優業に専念してしまい、俺の前に現れることはなくなった。その姿を見るのはいつだって液晶の向こう側で、何回テレビをこわしたことか。

冒頭の話に戻ろう。俺が臨也を好きなのは秘密で、会ってしまってからは憧れから恋に変わったこの気持ちは一生隠しておくべき事実だった。だけどなんでお前はそんな簡単に俺の決意だとか、理性を揺るがしてくれるんだ!

「へぇ、けっこーいい部屋住んでるんだね」
「まぁな。」

臨也が目の前にいる。しかも俺の部屋に、だ。グッズの件は大丈夫なのか、って?心配無用、俺は安月給ながらもなんとか2LDKの部屋に住んでいる。臨也を通したのは親や幽が来たときに焦らないように何も置いていないリビング。アレなものはすべて一つの部屋にまとめてある。


実は今日、高校時代の同窓会があったのだ。新羅に誘われてしぶしぶ同行すると、まあまあいい居酒屋だった。座敷らしく、たくさんの靴が並んでいた。飯食ってさっさと帰るか、と考えていたのに中に入ってみれば、なんとあの臨也がいたのだ。今じゃすっかり有名になったから、高校の時は見向きもしなかったヤツがサインくれ!と騒いでいるのを見てグラスを10個は破壊した。臨也も臨也で、ニコニコと応対している。小一時間ほどで落ち着いたのだが、俺が端っこでひたすら飯を食っていたら、誰かがストンと横に座った。驚いたことに臨也が俺の隣に来て酒を飲み始めた。
「久しぶりだねーシズちゃん」
「…おう」
池袋自動喧嘩人形って噂はよく聞くよ、今何の仕事してるの、ホントにバーテン服だね、弟くんにはお世話になってるよ、など色々世間話をしたあと、最後に彼女いるの?と聞かれた。
ここはいる、と言って男の威厳を保つべきか、正直にいないと言ってしまうか悩んだ。悩んだ挙げ句、出した答えは嘘をつく、だった。
「…い、る。」
「へぇー」
ちょっとだけ笑いながらグラスを傾ける姿に目を奪われる。ひっきりなしに飲んでいるせいか赤くなった頬に、酒を飲む度に上下する綺麗な形をした喉仏。何か媒体を通し手なら毎日見ているが、本物と顔をつき合わせるのは何年ぶりだろうか。臨也が隣にいる、と再認識してしまい体が固くなる。紛れもなく俺が恋焦がれていた張本人だ。それにしても、今日の臨也は珍しい。よく考えれば、高校の時だってこんなに言葉を交わしたことはなかったし、俺がこんな風におとなしくしているのもはじめてだ。やばい、背中に変な汗が流れてきた。
臨也はというと、女子に酒をそそがれる度に煽っている。

「俺はね、いないよ。彼女。」
「そ…うか」
落ち着け落ち着くんだ俺!なんとかガッツポーズは見えないところで抑えておいた。でも、臨也に恋人がいないからって何か行動を起こせる俺ではない。臆病だ、チキンだというのは理解しているが、どうしても一歩が踏み出せない。高校の時からそうだった。修学旅行で一斉入浴だったときも臨也の方を一回も見れなかったし、喧嘩の途中でキスできる体勢になっても何もできなかった。今思い返しても俺、どんだけヘタレなんだよ、クソッ!

「眠い。」
うとうととしている臨也の破壊力はヤバかった。危うくあれが元気になるところだった。臨也は持っていたグラスを置くと、体を横にして俺の太股に頭を置いた。え、ちょ、
「臨也?」
「眠い、寝たい、ちょっとだけだから。」
と言って目を閉じる。内心本気で焦っていると、臨也がもぞもぞと動いて俺の腹に顔をくっつけた。その位置がしっくりきたのか、そのまま寝息をたて始めてしまった。
どうするんだ!?どうすればいい!?とりあえず、臨也の寝顔を撮ろうと近寄ってきた奴らを睨んでおっ払い、頭を冷やそうと何度も水を飲む。落ち着いてきたので、チラッと顔を覗くとすやすやと眠っていた。髪の毛で顔がよく見えないので、恐る恐る手を伸ばして髪を耳にかける。サラサラとした感触につい何度も手を滑らせ、そのまま頬に触れ何度か指先で撫でる。アルコールが回って火照った頬は雑誌やテレビで見る涼しい顔が想像できないくらいあどけない。ちょっとだけ唇に触れてみたが、なんだこの柔らかさは!ふにふに何度も押していると、んーと唸ってさらに顔を押しつけてきた。まだ大丈夫だよな、まだもうちょっと触りたい。
そういえば、ドラマでキスしてたよな、凄い濃厚な。仕事だから仕方ないのだろうけど、あれは本気で嫉妬した。俺が嫉妬したところでどうにもならないのだけど、もしよかったら、俺にもあれくらい濃いのをやってほしい。
なんとか感触を覚えておこうと俺が臨也の口を撫で回していると、突然幹事の男が声をあげた
「すいませーん、とりあえず一次会はお開きにします!二次会行く人は俺のとこきてねー」

チッ、いいところで…!
仕方なく臨也を起こしにかかる
「おい、起きろ。終わりらしいぞ」
「んっ…」
ちょっと掠れた声なんてやめてほしい。えろい。

「お前二次会行くのか?」
「んー行かないよ。シズちゃんは?」
「俺もいかねぇ」
臨也は体を起こすと大きな欠伸をして立ち上がった。臨也の頭が乗っていたところだけ熱をもっているかのように熱い。ああ、来てよかった、本当に来てよかった。今度新羅になんかお菓子持っていかないとな、と、もうまとめに入りかかっていた俺の脳に本日最大の爆弾が投下された。

「ねぇ、シズちゃん。家…行ってもいい?」
頭がオーバーフローした。なんだ、誘われているのか?夢か?夢なのか?
理由を聞くと、今、直接家に帰ったら後をつけられるかもしれない、とのことだった。もちろん、二つ返事でOKを出した。





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