だいたい鏡対称の続きっぽいもの。
デリ雄が変態






驚いたことに、シズちゃんは社員旅行だか慰安旅行だかで今日の早朝に家を出て一泊二日の旅を満喫しにいった。
あの会社にそんなイベントあるのか…?と思ったが、そんなのはどうでもいい。
問題は目の前のコイツである。

「いーざぁーやぁー」
「仕事の邪魔だからやめてくれない?」
「冷たい!でもそこに痺れる萌え滾る!」
「うるさい、んで、この手をどけろ」
「なぁ、なんかお前めっちゃイイ匂いするんだけど」「話を聞け」


あろうことか、シズちゃんはデリ雄を俺に託して、じゃあな!といい笑顔で颯爽と旅立ちやがった。
あのアイアンゴーレムは俺がデリ雄に襲われそうになったのを忘れたのか?頭までアイアンなのか?
シズちゃんの意図を計りかねる。
全くもって分からない!

あの事故(?)のあと、ちょっとデリ雄とは距離を置いていたのだけど、臨也臨也と擦り寄ってくる様はなかなか気分がよかった。
シズちゃんはそんな風にはしてこないしね。
それについてはシズちゃんも一丁前に「臨也から離れろ」だなんて嫉妬(笑)をしてたけど、それ以外は特に何もしてこないから俺もシズちゃんもデリ雄には気を許していた、のに。

シズちゃんが目の前から消えた途端に、玄関で押し倒された。

「いや、ちょ、え?」
「……」
「何、どうし「ぃぃぃよっしゃああああああ!」
と俺に跨ったままでガッツポーズを決めると、素晴らしい笑顔でヤツはこう言い放った。

「これで臨也に好き勝手できる!」


まぁ、そんな経緯で今の状況に至る。
俺がコーヒーを取りに席を立った隙に、その場所を奪い、戻ってきた俺がどけといっても、「さぁ膝に座ってくれ!」とキラキラした瞳で見つめてくる。
観念して、ソファーに座りノートパソコンで仕事を始めると横から体を持ち上げられ、ついに腰周りに両腕のホールドつきで膝の上に乗せられた。
やめろ、といっても止めてくれないので、肘で鳩尾を殴ってみた。
すると、簡単に腕が離れた。立ち上がって後ろを見ると、腹を抱えてのたうち回っている。よっぽど痛かったのかな?
痛覚神経があるなんて妙なアンドロイドだなぁ。


痛い目に会わせたその後もセクハラは止まなかった。
まぁ簡単に例を上げてみようか。

ケース1
「なんでアイス食ってんだ?」
「冬に暖房が効いた部屋の中で食べるアイスは絶品だよ」
「へぇー。」
「……」
「……」
「…何」
「食い方がエロい」
「黙れ変態」
「なぁ、臨也。そんな棒アイスじゃなくて俺のモノを銜えないか?」
「黙れ」

ケース2
トイレの扉を開けようとしたら、何かに当たった。
「ってー」
「何でこんなところで座りこんでるの」
「いや、臨也がトイレしてる音を聞こうと。ごちそうさまです」
げしげしげし
「痛い!頭痛い!踏まないでくれ!嬉しいけど!」

ケース3
「なんでここにいるのさ」
「あー、遅かったか。風呂に入ってるところを見たかったのに!」
「覗き?変態なの?ねぇ変態なの?」
「いや、でも風呂上がりの臨也もいいな!腰にタオルが巻き付けてあるのは頂けないが、乳首が!乳首がエロい!真っ赤!吸ってもいいか?」
「東京湾に沈められたい?って、あ、やめろ!」
「何でだよ、タオル取るくらい良いじゃないか。減るもんじゃないし。もしかして極短極小包茎ちんことか?」
凄く腹が立ったので、股間を蹴り上げといた。
因みに俺のサイズは決して小さくはない。

ケース4
「っはぁ」
「…」
「っく、」
「…」
「いざや」
「…人が安らかに眠っている横でマスターベーションってどういうことかな」
「え、起きてたのか!?」
「さっき起きたよ。ところで、目の前のこのブツを何とかしてくれないかな」
「ちょっと待て、そろそろイくから」
「お前がちょっと待て。この体勢は顔射する気満々だろ、っておい!」
「あーエロッ。やべ、また起ってきた」
「ぐえ、ちょっと口に入ったんだけど!気持ち悪い!」
ピローン
「撮るなよ!消せよ!」
「おし、静雄に送信っと」
「馬鹿だろ!お前馬鹿だろ!シズちゃんに殺される!」
顔を洗いに行く前に、頭蹴り飛ばして鳩尾蹴飛ばしておまけにもう一回頭を蹴飛ばしといた。



正直疲れた。
電源切れば良いじゃないかって?それができたら俺も苦労しない。そもそもスイッチが何処にあるのか知らない。

なんとか諸悪の根源、デリ雄を寝室から追い出して鍵しめて、さて寝よう!としたのに。


「いぃぃざぁぁやぁぁくぅぅぅぅぅん!!」
ドゴォ、という轟音とともに寝室の扉が吹き飛ばされた。
え?なんでシズちゃん?
凶悪な威圧感を放っている奴の後ろを見ると、デリ雄が小さくなってこちらの様子を伺っている。
おい、お前のせいだろ!

「なんだよシズちゃん…。やっと寝れそうだったのに」
「やっと、だと?さっきまで何してやがったんだよコラ」
「んー、デリ雄の」
「なんだ」
「オカズ役?」

その一言に、シズちゃんの青筋がいっきに増えた。
ていうか、なんでここにいるの?旅行じゃなかったの?
たとえとんぼ返りしても、メールしてから1時間経ってないんだけどなぁ。
流石化け物。

「浮気か?」
「違う」
「じゃあこれは何だ!」
そういって携帯の画面を見せられる。
うん、さっきの画像ですね。
ご丁寧に「臨也やばい、臨也エロい、臨也かわいい」なんて本文が添えられている。

「簡潔に言うと、デリ雄が俺で抜いてただけだよ。顔射というオプションつきでね。俺被害者、デリ雄加害者」
「よしわかった。お前は悪く無いんだな。よし、デリ雄」

名前を呼ばれてそそくさとシズちゃんの目の前にデリ雄が現れた。

「俺のものに手ぇ出したってことは、殺されても文句はねぇよな!!」
「あああ、すいませんでしたぁぁ!」
なんだろう、デジャヴ?既視感?デリ雄はいつか見た完璧な土下座を繰り出していた。

まぁそんなこんなで、シズちゃんが本気で嫉妬する所を見れたのでさっきまでの不適切な言動は許してやることにした。

ただ、シズちゃんは説教してたはずが、いつの間にか俺の何処にグッとくるかとか、メイド服を着せたいだとか、いつもはどんな俺を想像して抜いてるとか、不愉快な会話が聞こえたので、とりあえず二人ともしばらく俺の家に出入り禁止にして、3日間はメールも電話も無視してやった。

絶対、すぐに駆け付けてくれて嬉しい、なんて言ってやらない!!












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デリ雄まじ変態
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