テイルズ短編 | ナノ



同居始めました

「ルームシェアって何だ?」

始まりはそんな何気ないルークの一言だった。
問われたユーリはすぐに何だ知らないのか、と鼻で笑ってやろうとしたがやめた。そんなことを言えば確実に機嫌を悪くする。そしてもういい、などと言ってガイやフレン辺りに頼るのだ。それはユーリにとってとても面白くない。

「ああ、友達とかとアパートとかマンションで同じ部屋を借りて一緒に住むことだな。」
「なんでそんな事するんだ?」
「まぁ単にそいつと住みたいってのもあるかも知れねぇが大体は節約のためだな。一人で借りたら高くつくが二、三人なら何とかなるからな。」

ルークはへぇ、と興味ありげに相槌を打つものだからユーリは何故突然聞いたのかとルークに尋ねた。ルークはえ、と聞かれるとは思っていなかったのだろう少し返事に困っていた。そして大したことじゃない、と切り捨てたがユーリはルークが大したことでもないことを聞いてこないという事は分かっていた。

「ん?何だ、俺とルームシェアしたかったのか?」
「は?!んなわけねーし!クレス達に誘われただけだっつの!」
「へぇ…」
「はっ!しまっ…」

今更口を両手で押さえても後の祭り。気付けばとても良い笑顔の(その割にはその風貌に良く合った真っ黒いオーラを出している)ユーリがルークの正に目と鼻の先、いやさらに近くにいた。鼻同士が触れそうな程近くに寄ったユーリにルークは身の危険を感じずにはいられなかった。

「で、どう答えたんだ?」
「えっ、いや、別に…意味わかんなかったから考えとくって……」
「……そうか。」

そう言いながら離れていくユーリにルークは内心ほっとした。ユーリは少し考えるように手を顎に当てた。

「よし、俺とルームシェアするか。」
「はぁ?!」

ルークが驚いてユーリを見ると彼は良い笑顔(今度はいたずらっ子のような)をしていた。ユーリは前々から家は出たいって言ってたろ、ともっともなことを言っているが何を考えているのかルークには読み取れない。

「どのみち料理もろくに出来ないのに一人で暮らすなんて無理だろ?」
「そりゃまぁそうだけど……」
「な?俺だってアパートで一人暮らしって結構キツいし。お前もちゃんと稼ぐんだぞ。」
「何で俺が!大体、稼がなくても金あるし……」
「それじゃ家を出た意味ねぇだろ。まぁとりあえずは同棲する気になったんだな?」
「誰がんなこと言ったよ!」
「嫌なのか?」
「別にっ…いやじゃぬぇーけど……」

ルークのもごもごと歯切りの悪い返事にユーリはけど?と聞き直した。ルークは察しろ、とでも言いたそうに顔を赤く染めて目を泳がせている。

「で、どうなんだ。」
「どうって…し、仕方ねーな!」

親の許可が下りるのを待っとけ、とルークが腕を組んでユーリを見ればユーリはこの返答は予測していたと言わんばかりによしよし、とルークの頭をなでた。

「夜突然会いたくなったり俺のケーキ食いたくなったり、お前って結構俺にベタ惚れだよな。」
「ち…ちげーよ!自惚れんな!」
「でも好きでもない奴と付き合ったりしねぇよな?それも男と。」

ルークの虚勢をまんまと崩しうぐぐ、と悔しそうにするルークをユーリは何度見たことか。そんな姿が愛しいと思う彼もかなり重症であるのだが。

「あ、許可おりた。」
「はぁ?!早っ!」
「前々から家は出るって言ってたからな。アッシュが家を継ぐし、『幸せになりなさい』だとさ。」
「…お前の親ってたまにすげぇよな。」

ルークは携帯をいじりながら楽しそうにメールを返した。明日には荷物をまとめるから、と言うルークにユーリはルークを抱き締めた。

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