テイルズ短編 | ナノ



皆の前=殺伐、二人きり=イチャラブ

「だーっ!うるせーっての!」
「お前の方がうるさいだろ、ルーク?」

もはや名物にもなってきたこの二人の口喧嘩にその場にいる者は皆呆れかえっていた。この二人の仲の悪さはこの剣道部内だけでなく学校中に知れ渡っていると言っても過言ではない。この口喧嘩は本当に些細なことから始まり、今の状態から悪いときは剣での試合と称したリアルファイトにまで発展することがある。口でも剣でも負けるのはいつもルークなのだが。

「てめーマジムカつく!」
「へいへい、そりゃあ悪うございました。」
「だーっ!」

ルークは喧嘩相手に竹刀を向けた。すると向けられた相手、ユーリはそれを鼻で笑い同じく竹刀を構えた。周りはいつものことだと口出しする者はいない。そんな中、真っ先に動いたのはルークだった。剣道特有の雄叫び(少なからず他意は含まれているだろう)をあげながらユーリに突進する。だがルークの竹刀はユーリによって軌道をそらされ気づけばユーリがルークに面を一本決めていた。
余りにもあざやかすぎる動きでルークはますますぐぬぬ、と悔しがり再び向き直った。

結局ルークの気が済むまで行われたそれは一度としてルークに勝利などなかった。

「ユーリ、ちょっと大人げないよ、君はルークより年上だろう?手加減くらい…」
「したらしたで手加減すんなって怒り出すんだって。前そうだった。」

帰り道ユーリは幼なじみのフレンと今日のルークとの喧嘩もとい試合について話していた。真面目で何気にルークをかわいがっている為、(本人は贔屓はしていないと言うが)ルークをからかう度ユーリに注意をしている。勿論その注意を聞いたことは無いが。

「で、今日は何が原因だったんだい?」
「ん?ああ、俺が昼に食ってたレアチーズケーキをくれってごねてな。」
「レアチーズケーキ……」
「まぁ当然やるわけねぇからな。そしたらまぁ部活の時間に喧嘩売られてな。」
「な、なるほどね。」

ユーリはフレンに愚痴でも言うかのようにまったくあいつは、と続ける。ユーリはルークを快く、と言うよりも確実に嫌っているのだろう。彼を見つめる瞳には負の感情が宿っているように見える。ユーリは決して裕福と言えない孤児院で育った。対してルークは有名な財閥の息子として大切に育てられたようで(フレン曰く)少々我が儘だった。不自由の中育ったユーリと何不自由なく育ったルーク。ルークが我が儘を言う度にユーリの癇に障るのは仕方のないことなのかもしれない。

「じゃ、ここでな。」
「ああ。じゃあね。」

ユーリはフレンに別れを告げて自らの帰路についた。フレンはユーリの後ろ姿を見て何故だろう、不安になりユーリを呼んだ。

「ユーリ!」
「あ?」
「くれぐれも間違いをおかさないでくれよ!」
「…へいへーい。」

フレンの間違え云々発言にユーリは面倒そうに返事をすると左手を少し挙げてひらひらと振った。

「……間違い、ね。」

ユーリは歩きながら一人ぽつりと呟いた。



「ほら、お坊ちゃん。」
「ん。」

今ユーリの部屋には先程フレンと話題になっていたルークがいた。ユーリが自分の暮らしているアパートへ帰るとすでにルークは彼を待ちかまえていたのだ。ユーリは小さく溜め息を吐きながらもルークを部屋に上げた。

「お坊ちゃんが食いたがってたレアチーズケーキだぜ。味わって食えよ?」
「んー。」
「うまいか?」
「……。」

ユーリがことりとテーブルへ置いたそれにフォークをたて、幸せそうに口に運ぶルークにユーリの口元が緩む。ルークは数回同じ動作をするとフォークに刺さったケーキの一部をユーリの目の前にもってきた。

「ほれ。」
「…お前な、男同士でさむいぞ。」
「んだよ、食えってほら。」

ユーリはむすっと頬を膨らませるルークに子供っぽいな、と思いながらその子供に従うように口を開いた。間髪入れずフォークを突っ込んでくるルークに内心刺さったりしたら危ないな、と思いながらもケーキを味わう。ルークはにやにやと何が楽しいのだろうか笑顔を向ける。

「んーうめぇな。」
「だろー。」
「お坊ちゃんのお口にあったみたいで良かったわ。」
「!だ、誰がんなこと言ったよ!」

ルークは顔を赤らめふん、と鼻を鳴らした。それからまたケーキを食べ進めようとケーキに向いたが、それはひょいとユーリに取り上げられた。

「なっ…!」
「お口にあわなかったんなら出せないよなぁ?いやーそれなら仕方ないわー。」
「あわないなんて言ってねぇだろ!」
「うまかったか?」
「うっ…」

今度はユーリがにやにやと笑い出しルークはきっとユーリを睨んだ。ユーリはそれを全く気にしてないようにケーキの乗った皿をゆらゆらと揺らす。体格が違えば腕の長さも違うというもので、ルークの伸ばす腕はユーリの長い腕の向こうにある皿には辿りつかない。こうなればケーキをもう一度手に入れる方法は一つだ。

「〜〜〜っ!わーったよ!う、うまかった……から!ケーキよこせ!」

うまかったと言うときだけ音量を下げたがユーリの耳には確実に届いた。ユーリはこれ以上もったいぶるとへそを曲げるな、と素直に皿をルークに渡した。

「ほれ、良くできました。」
「うっせー、ガキ扱いすんなっつの。」

ルークは戻ってきたケーキを再び食べ進め始めた。如何にも美味しそうに食べるルークにユーリも作った甲斐があったというもの。その幸せそうな表情で何故美味しくないと言えるのか。ルークがうまいというのはわかりきっていたが実際にその口から聞きたい。ユーリは面白いな、と思いながらケーキを口の中に運ぶルークの頭を撫でた。

「んー?」
「いいから、撫でさせとけって。」

ルークは頭の上の手をちら、と少しだけ睨むとすぐに興味がなくなったかのようにケーキに集中が移った。

「(…わりぃな、フレン。間違い、起こすかもしんねぇ。)」

ユーリは一人ほくそ笑んでルークの名を呼んだ。

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