及川さんに追いかけられるA

「……………」

決意をしたはすだった。
言いたいことはあまりまとまっていないけど、今思ってることを全部彼女に話してみよう。それを聞いた彼女が何て言うかは分からないけど、とりあえず聞いて貰おう。そう思って彼女に連絡を取ったはずなのに


(丸3日もLINEに既読つかないし…!!)


机の上で握りしめたスマホに額を叩きつける。
「都合がいい時でいいので話す時間を下さい」3日前、珍しく絵文字も顔文字も入れずに彼女に送ったLINEだ。しかしその画面には未だに既読の文字がついていない。

(…風邪かなんかで休んでんのかな…いやでもよほどの高熱じゃなきゃ携帯くらい見るでしょ。もしくは俺からってだけで見るの拒否ってるとか……いやでもちゃんと「時間下さい」って言ったしな…さすがにもう無視はされないと思うんだけど)

がしがしと頭を掻きながら様々な思考を巡らせる。

「…仕方ない」

直接言いに行こう。
何か用事があって見ていないだけかもしれないと思い、この3日直接会いに行くのは遠慮していた。でも限界だ。
昼休みで賑わっている階段を降りて1年生の教室へ向かう。彼女のクラスを覗くと窓際の席で金田一がいつものように友人と昼食をとっていた。予想はしていたけど、その隣の席に彼女の姿はない。

「金田一!」

少し大きめの声で後輩を呼ぶ。呼ばれるまで気づかなかった金田一は勢いよく顔を上げ、こちらに気づくと慌てて席を立った。

「柿田ちゃん、休み?」

金田一が「どうしたんですか」と聞く前に席を見て問いかける。金田一もつられて自分の席を振り返った。

「いえ、普通に来てますけど…」
「ここ数日休んだりしてた?」
「え?いや、毎日来てましたけど…今はいないですね」
「どこ行ったか分かる?」
「職員室だと思います。さっき呼び出しくらってたので」
「分かったありがと!」

金田一が質問する暇もなく、元部長はそう言って教室を離れて行った。先日聞いたことをまだ受け入れ切れずにいる金田一は微妙な表情で先輩を見送ってから再び自分の席に戻った。

「失礼しまーす」

その部屋自体に全く用がないのに躊躇なく職員室のドアを開ける。学年主任や入畑監督に「受験勉強ちゃんとやってんのか」とか絡まれたけれど、笑って誤魔化しながら部屋全体を見渡した。昼食をとっている教師ばかりで生徒の姿がない。

…すれ違ったかな

十数秒で職員室を出て考える。
…用が済んでそのまま教室に戻ったんなら今俺が通ってきた西側階段が最短だし、教室には戻ってないと思う。あとは…屋上で友達と弁当食べてるとか?いやでも屋上とか行かなそうだないつも混んでるし…

「…で、何で俺の所に来るんですか?」
「騙されないぞ国見ちゃん。金田一よりお前の方が柿田ちゃんと仲良いって割れてるからな」

1年6組の教室。
国見は席に座ったままとても嫌そうな顔で元部長を見上げる。多分後で金田一が怒られると思う。

「今日はほんとに居ませんよ。俺もさっき購買から戻ってきたので」
「じゃあどこにいるのさ」
「知りません。本人にメールなりLINEなりして聞いて下さい」
「それが繋がらないからこうして学校中探してるのに!!」
(…傍から見たらただのストーカーだな…)

口が裂けても言わないけど。



prev|Back|next

しおりを挟む
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -