memo | ナノ



明日の幸せを夢みる
2013/02/03 00:13

 直ぐに夜が明ける。陽が昇る。朝が、来てしまう。厭だ厭だ。明けないで。


「あけぬれば」
 隣でベッドライトを点け読書していた中禅寺に、不意に頭を撫でられた。
「朝は嫌い?」
「ん…」
 君が優しくなくなってしまうから──とは恥ずかしくて流石に云えぬ。子供染みた駄々。
「嫌いじゃないさ。苦手なだけ」
 朝日は眩しすぎて目が痛い。夜は暗すぎておそろしい。本当は一日中、怖くて苦しくてたまらないのだ。それでも夜を少しだけ心待ちにしているのは。
「ふうん? 本当に?」
 見抜かれているのかもしれぬ。中禅寺には隠し事などできた試しがない。
「何だよ。何か云いたげだな」
「いいさ、別に。君は素直じゃないもの。ねぇ」
 含み笑いをする中禅寺は、嬉しそうな顔で本の続きを読みだす。夜はまだ長い。


明けぬれば暮るるものとは知りながら尚恨めしき朝ぼらけかな

*121125



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