2012/07/31 21:35 「おはよう」 誰に言うでもなく呟く。僕の顔をちらりと見、ゆるやかに体温を上昇させていく。彼が昨夜の情事を思い出して顔を赤くしていることは推理するまでもない。 「とりあえずコーヒーだな」 言いながら静かにベッドを脱け出す。ぺたぺたと遠ざかる足音。軈て漂ってくるコーヒーの香り。今日はインスタントではなさそうだ。 僕は彼ほどコーヒーを好きではない。どちらかと言えば紅茶が好きである。だが、彼が手間をかけて淹れてくれるコーヒーはわりと本格的なもので、こんな僕にもインスタントよりは美味いくらいのことは判る。 御機嫌な鼻歌がコーヒーの香りと共に戻ってきた。二つのマグカップを枕元の小さなテーブルに置き、彼は身を屈めて僕の名前を呼ぶ。 「おはよう、小室」 *120520 |