2012/05/03 17:23 私には答えられる筈がなかった。 「君はどんな答えを望むのかな」 哲学はもう飽きただろう。 「答えなんか要らないよ」 教えていただきたい訳じゃあないのさと嫌味たらしい口調を真似て関口は笑う。微笑とも苦笑とも言えない笑みを口の端にぶら提げたまま、関口は目を閉じ耳を塞いで外界を遮断した。 関口は知らない。或いは識っていて、認識しない。───私の狂気と愛を。 そう、私は決して報われぬ、報われてはならぬ片恋に囚われている。 ───悲劇だと思うかい? 否、これは喜劇なのだ。私は滑稽な詐欺師だ。己が何を騙しているのかも知らず、結局自身を欺いてしまう愚かな詐欺(ぺてん)師だ。 だから私はもう一度、もう一度と繰り返す。 私が彼を愛している筈はないと。 *120415 *愛されないのに愛しているの? *違うよ、愛したいから愛されないんだよ お題:悲劇だと思うかい? title by:にやり |