真0日目 始 | ナノ

真0日目 始


「ソラ…?」

ライムの声が響く。
賭けの事だと気付くのに大して時間はかからなかった。

「あとで話してやる。今は教室へ向かおう」

そう言って歩き出したソラと私達には不自然な間があった。





その後は夢の通りに事は進み体育館に集まっている

「ほんと何なの?」
「皆同じ夢見とったんか」

皆で話しているとついにスクリーンに文字が映し出され、皆の視線がそちらへ向かう。

『Congratulations!』

「はぁ?何いってんの?」

意味深な言葉にトモがキレた。
どう考えても煽っているようにしか見えない。

『これで君たちはこのGAMEを脱出するための鍵を手に入れたわけだ!さぁ、最後まで一人でも生き残ってごらん』

「どこまでオレたちを舐めてんだ、お前は」

ソラの声が響く。こんなに感情の乗っている彼女の声を、すごく久しぶりに聞いた気がした。

『舐めてなどいないさ。ただ、君がどんなに足掻いてもつかめなかった未来を掴んだのは紅だ。君ではこのGAMEをクリアできなかった。実に、哀れだ』

機械的に写される文字なのに苛立ちが募り思わず叫ぶ。この時ばかりはソラに対する懐疑心も吹き飛んでいた。

「うだうだうるさい!!何が何だかわかんないけど、あの最後の瞬間まであきらめなかったソラがいたから私たちは今ここに立ってる。元凶がソラを憐れむなんてお門違いなんだよ!!」

「ソラをこれ以上馬鹿にするな!!」

そう続けた言葉に拳を握り締め、俯いていたソラが私を見る気配がする。

そしてもう一度下を向いた彼女は絞り出すように言葉を紡いだ。

「……あぁ、そうだ。確かにオレは何十周と繰り返す中で皆を見殺しにしてきた。この手にかけたことだって少なくない」

ソラの言葉に静まり返る空気。だが、皆がその続きの言葉を待っていた。

「それでもオレはこの負の連鎖を断ち切るためだけに選択を続けた。その結果が今なら、その為の過程を、オレは否定しないし、後悔しない」

まっすぐ前を見据えたソラの目に思わず笑みがこぼれた。

『……精々最後まで足掻くがいい。ここから先だって君たちの選択次第なのだから』

ブツンッと音を立ててスクリーンの文字は消える。

「何が何でも終わらせてやる」
「ソラ」

声をかけると少しの間の後、ゆったりとした動作で彼女は振り返った。

「それじゃぁ、昔話をしようか」














ある所に仲のよい10人の子供達がおりました。




ある日子供達は見ず知らずの所に連れて来られ、突然ゲームをさせられました。




化け物を倒し、7日間生き残る、というものです。




幸い、強者揃いだった子ども達は全員生きて帰るつもりで戦いに挑みました。




しかし、日が経つにつれ、子ども達は1人、また1人と減り、最後には2人しか残りませんでした。




残った1人の少女は化け物となり、もう一人の少女に言いました。







「私を殺してください」







泣く泣くもう一人の少女は化け物になった少女を殺し、元の世界に戻りました。




目を覚ました少女の周りには、死んでしまったはずの仲間達がいました。




しかし彼らにはあの悪夢の記憶はなかったのです。




そして、化け物となり少女に殺された少女のことは、殺した本人以外、誰1人として覚えていませんでしたとさ。











「その生き残った方の少女って…」
「オレだよ」
「っ…知っとったんならなんで言わんかった!!もっとはよ言っとったら…」
「未来が変わったとでも言うのか?あいつの支配下にある物語はどう足掻いても最良のエンドは望めない。だから、せめて最善と成り得る選択をしながら色々試したんだよ!もちろん話した事だってあったさ。でも変わらなかった。変えられなかった!」

ソラの荒い息が響く。

暫くの沈黙の後、マナが口を開いた。

「でも…それじゃぁ今回はどうなるの?」
「…多分、全員記憶を持って廻るっていうイレギュラーを起こしたから、今回はあいつの支配下に無いはずだ。だからオレ達の選択次第で未来を変えられる。但し、ラストチャンスだ。これで失敗した場合、ゲームは終了。次の犠牲者がリオウになる」

皆の息を呑む音が聞こえた。

「…今まで話さなかったのは本当にごめん。
だけど、力を貸してくれ」

皆に頭を下げるソラ。暫く辺りは静寂に包まれた。

そして、私は口を開く。

「ばぁーか」

「へ?」

私の言葉にぽかん、と口を開け、間抜けな顔を見せるソラ。

「皆同じ気持ちだよ」
「この後に及んで力貸さないわけ無いじゃん」
「一人で背負いすぎ」

マナ、ユイカ、トモエがソラに抱きついた。

「もう少し、肩の力を抜いてもいいんじゃ無いか?」
「僕を騙したんや。最後まで使い」
「蒼禅が頑張ってくれてたのはよーくわかったしな」

川崎、アビ、大澤も言った。

「もっと頼ってよ」
「私らにも背負わせな」
「大丈夫。一人じゃないよ」

一人一人声を掛けるとソラの目から大粒の涙が零れた。

しかし本人に泣いている自覚は無いようで、涙を拭おうともせず呆然としてしまっている。

「ソラ…泣いていいんだよ?」

私がそう声を掛けるとくしゃっと顔を歪め更に涙を零し、大声で泣きじゃくった。

これが私達がこのゲームが始まってから初めて見た、ソラの本物の感情だった。



ー残り 7日ー

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