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五枚の花弁が実る春
四.この戦いが終わったら

 盛大な自己嫌悪なう。
 家で勉強するのに、集中が続かない。だから図書館の自習スペースに来てみたものの、結局本読んでちゃ意味ないじゃないか。
「こんにちは、元気かい?」
 そう、後ろから声をかけられた。振り返って返事を返す。
「お久しぶりです。肉体的には問題無いですよ、メンタルが色んな意味でヤバイですが……」
 そう、冗談めかしく言えば、相談にのるよとばかりにお茶に誘われた。断ることもないので、そのまま外へ向かう。
「それで、何がストレスだって?」
 喫茶店で適当に注文を済ませると、そのまま話を切り出される。
「人に会わないってのも、やる気喪失の一因になるもんなんですねえ」
 自分のダメさになんだか泣けてくる。学校が自由登校になったものだから、家で勉強しようと決めたのだ。でも、家の中には誘惑するものが多いためこう上手くはいかなかった。
 添削してもらうために、頑張って解いてはいたのだけど。なんて、むしろ本末転倒な気もしていた。
「一応志望大学は変わってないんですけど、学科変わっちゃって」
 でも、行きたくない学科ってわけじゃなくて、二番目に興味があるものだったはずなんだけどな。なんてこぼす。
「頑張ってるんでしょ、なら大丈夫だよ」
「一応、得意な試験形式ですからねー」
 なら安心だね。とまるで受かったかのような声で彼は言う。
「まだ、受験すらしてないのに気が早すぎません?」
 そういうと、彼はいたずらっぽく笑うと、こう話し出す。
「言葉には魔力が宿ってるんだ。だから、言葉に出したことは現実になるんだ」
 だから、君は受かるよ。信じて。信じるのも重要な事だからね。彼はそう真剣な口調で言うものだから、私は吹き出してしまった。
「相変わらず、まともな顔で突拍子もない事言いますよね」
 でも、なんだか肩の荷が下りたような気がした。この人に言われたら本当に大丈夫な気がするんだもん。
 そんなことを話していると、注文していたケーキとドリンクが届いた。私はショートケーキ、彼はコーヒーだ。
 小さく手を合わせて、苺から口に運ぶ。苺を先に食べるのは、好きだからというわけではないけれど。むしろその逆だったりする。
「あー、この受験戦争が終わってしまえばいいのに。そうすれば、夢のキャンパスライフですよ」
「大学だって、楽しいだけでもないけどね」
 きゃー、私の夢を壊さないでー、なんてふざけてみたり。
「そういえば、大学入ったら一人暮らしなんだっけ?」
「そうですよ、やっと自由を手に入れられます」
 大袈裟に言うと、彼はそれがツボにはまったようだった。あ、そうだついでにお願いしとこう。
「料理レパートリー少ないんですけどなんかいいもの無いですかね?」
「なんかって言われてもなあ」
 まあ、困ったときは助けてあげるよ。というありがたい言葉をもらった。そんな事態が来た時は遠慮なく押しかけよう。
「ごちそうさまでした。ゴチです」
「これくらい別に構わないよ。それじゃ、ラストスパート頑張れよ」
 そう言って、彼は私の髪の毛をぐしゃぐしゃとかき乱す。
「合格したら、ここのパフェ奢ってください」
 これくらいのご褒美はあっていいと思う。別に、ぐしゃぐしゃにされた恨みだとか、パフェがお小遣いの半分を持ってかれる高いものだと言うのはほとんど関係ない、多分。
 それでも彼は何故か嬉しそうに笑って、了承するのだ。
「報告楽しみに待ってるから」
 だなんて、頑張るしかないでしょう。

Write:2013/2/22 Post:2014/2/24



遠回りかもしれないけど、頑張った時間は無駄になんてならないから。



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