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五枚の花弁が実る春
Pray.その蕾は、咲くために。

 俯いて作業をしていると、どうにも肩がこる。気分転換に腕を回していると視界に入ってくる乱入者。
「何してんの」
 聞きたいのは、むしろこっちな訳で。自由登校でなおかつ推薦ですでに合格決定を決めているというのにわざわざ学校にいることに少し驚きを隠せない。
 内心でそんな事を考えていると、願掛け代わりに作ったミサンガもどきをのぞき込まれる。答える前にどうやら結論は出たらしく、もう受験は終わってなかったっけ、と。ご丁寧に首を傾げる仕草までつけて。
「大事な友達が、これから試験だから」
 何もしないで、ただぼうっとしていたくなかった。別に私だって試験まで努力してなかったわけでもないんだけどさ。後は結果を待つのみ。落ちる気なんて毛頭ないから、後期の勉強というていでこんなものを作っている訳だ。
 私たちのうち片方だけもう一年だなんて、気まずくなりかねない。だから、願掛け。
 落ちるなんてこと、あの子ならあり得ないと思うんだけどね。私より頭いいもん。
「信じてるのにそういうもの作るのって無駄じゃない?」
 これだから男の子って奴は。実利主義なのも大概にしてほしい。思わず無意識に口をとがらせて反論する。
「信じてるからこそ、形にしておいた方がいいんですー」
 女の子のココロと言うものをちっとも理解していない彼のことは放置だ、放置。一人で頑張ってるあの子の傍に、応援してる私がいるってこと。ちょっとでもいいから、支えになりたいんだ。
 さあ、早く仕上げにかからないと。学校でいつ会えるかわからないしね。明日が最後だったりしたら大変じゃないか。
 先に帰る、と教室を後にした彼は最後にこう言い残していった。
「それじゃあそのお友達に言っておいて。出来なかったことではなく、出来た事だけを考えろ。ってさ」
 強い北風が吹きつけている外だけど、窓からのぞいた枝の先には確かに蕾が膨らんでいた。
2015/10/06



 やった努力は、裏切りはしないさ。




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