人気のない公園
(オミ×カゲ・DC2中盤)
シンジュク23時──。
人気のない公園に、彼はやって来る。
火照った体を冷ます為。
それから、喉の渇きを癒す為。
そんな無防備でいいの?
さらわれても、知らないよ──。
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ガコン。
いつもの銘柄の缶コーヒーを選んで取り出すと、すぐにそばのベンチに腰を下ろす。
それから、プルトップを引き起こして中身を一気に喉の奥に流し込む。
缶コーヒー独特の甘味も疲れた体には心地好い。
「はーっ、美味い」
カゲミツは思わず一人ごちる。
と、いきなり背後から声を掛けられた。
「へえ、そんなに美味いの? 俺にも味見させてよ」
「………。もう…全部飲んじまったよ」
さっきまでのほんわかした表情は瞬時に消し去り、無表情になったカゲミツが振り向きもせずに答える。
「それは残念」
そう言いながら背後の男はすっと近寄ると、カゲミツの喉元にナイフを突き付けた。
「いきなり武器を出そうとするのやめてくれる?無粋だなぁ」
カゲミツがリストバンドに手を掛けたのを、目敏く見咎める。
「そっちこそっ。なんの用だよ、オミ。俺達はお前の遊びに付き合ってる暇はねえぞ」
「遊びだなんて…。つれないなぁ。俺はいつも本気なのに」
「爆弾におもちゃを仕掛けるのがお前の本気か?」
「やだな…。あれもお前の気を惹きたくてやった事なのに」
「ふざけるなっ」
思わず振り向こうとすると、首筋にツッと痛みが走る。
「あ、不用意に動かないで。お前を傷つけたくはないんだ。けど、そんなふうに動かれたらつけたくもない傷がついてしまうよ」
「くっ…」
「そんな瞳で睨まないでよ。そそられる…」
そういいながら、ナイフを首筋に当てたまま顎を持ち上げると、そのままくちづける。
「ん……」
そのまま、深く舌を差し入れ、カゲミツの口腔を味わう。
「はい、味見。ほんと、美味いね…」
(コーヒーじゃなくお前が、だけど…)
「いいかげんに…しろ」
「無理…だよ…。今ので、火がついちゃった…」
「なに…」
「立って」
カゲミツを強引に立たせると、ベンチの後ろの木の下まで連れていく。
ベンチと垣根に挟まれて、そこは恰好の死角になっていた。
「手をついて」
ナイフを当てたまま、指示する。
木の幹に手をつかせ、そして背後から羽交い締めにしながらカゲミツを抱き締めた。
「やめろっ」
「嫌だ…」
それから、カゲミツの腰のあたりまで手を下ろすと、腰にあるファスナーを横に開ける。
「ヒップオープンってさ……。いかにも、背後から犯してくれと言わんばかりじゃない?」
「冗談じゃねえ」
「…ほんと、冗談なんかじゃないよ…お前が欲しいんだ、カゲミツ」
そういいながら、自分の手袋を口で脱ぎ、その指を舐める。
「俺は欲しくない。止めてくれっ」
「嫌だ…。俺のものになってよ、カゲミツ。お前が手に入るなら、俺はテロを止めてもいい…」
そういいながら、カゲミツの秘所に指を差し入れる。
「なっ…。あっ…っ」
「他に何もいらないっ…」
「くっ…んっ…」
次第に指を増やしていく。
「だから、お前を…」
「あぅ…」
「俺にくれよっ…」
無我夢中にしがみつく。
その後の行為は、ただ必死で…。
熱に浮されたように、腰を突き上げながら、何度も何度もカゲミツの名前を呼び続けた──。
人気のない公園で、彼を見つめながら──。
こうする以外の、答えは見つけられずにいた。
もう、このままひっさらっていくしか。
道は残されてないと思った。
人気のない公園のベンチに、空き缶だけが取り残された。
(ウェブアンソロ企画参加作品)
2010.7.2
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