CROSS DELUSION
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君がすべて
(DC2・第7話)


ナイツオブラウンドの一日は、スパロウことオミのわがままから始まる。


「諜報! 今日のカゲミツのパンツの色は?」

「え……。まだ調べられてません」

ラークとビートルが戸惑いながら、答える。

「なんだと〜! お前ら減俸だ! さっさと調べろ」

「は、は〜い」

あわてて、部屋を飛び出す二人。



「スラッシュ、レン! 例のものはまだ?」

「例のものって……また、カゲミツの脱いだ服とかパンツとかかよ……」

スラッシュがうんざりした口調で答える。

「何のために毎日、銭湯行かせてると思ってるんだ〜。お前らも減俸だ!」

「でもさ、そう何度もパンツがなくなるとあっちも警戒するって」

レンが説得しようとする。

「うーん。確かに…。ところで、お前ら、昨日カゲミツのパンツ見た?」

「白のブリーフ」

ぼそり、とスラッシュが答えた。嫌そうに…。

「そうか、白か…ふふ…。似合うな……」

妄想の世界に飛びながら、ニマニマするオミ。

「減俸は…?」

恐る恐る伺うレン。

「ん? しない。だが、ボーナスアップしたければ、今日こそカゲミツの白のブリーフを……ハァハァ」

そのまま、さらに妄想のかなたに飛んでいくリーダーに、掛ける言葉はもやは何もない。

「わ、わかったよ……」

何か言うのを諦めたように、出ていく二人だった。





「あー、こんなところでジッとしてるのは飽きた。またカゲミツに会いに行きたい〜」

「えっ……、オミはカゲミツに会うためにテロしてるわけじゃないよね?」

気になってレイが訊ねる。

「そんなの……。それ以外に何の理由があるというんだよ」

「………」

あんぐり、口を開けるレイ。

「ア、アマネ……。どうしてこんな奴と組んでるのさ」

こっそりアマネに声を掛けるレイ。

「それは……」

答えようとするアマネ。しかし、オミの罵声が飛んでくる。

「そこ、私語うるさいっ! よーし、今度はイチジョウ侯爵家襲うぞ! みんな手はずを整えろ」

「……わかりました。スパロウ」

フライだけが、真面目くさった表情で頷いた。







その夜──。

アマネの部屋に、オミとヒサヤを除いた全員が押しかけた。

「アマネさん。俺もう我慢ならないっすよ」

温厚で面倒見のいいはずのカイトが泣きながら訴える。

「俺も」

ブルも頷く。

「いい加減、なんであんな奴と組んでるのか教えてよ」

レイも続く。

「それはだ……」

アマネがメガネを押し上げながら答える。

「あいつと契約したからだ」

「どんな?」

「フジナミ侯爵が亡くなった時、あいつの財産は、後見人に居座った叔父にほとんど横取りされそうになった。それをいただくかわりに、復讐の手助けをすることになった……」

「いただくって、……どうせ、強盗のように押し入って、その叔父さんとやらを殺しただけでしょ?」

「そんで、その叔父さんの財産もついでにごっそりいただいて…」

「いや、ま。そうだが。貸金庫とか、書類の手続きとか、ご本人様でないとどうにもならないこともあったので、彼がいたからこそ手に入った金だ」

「それで?」

「華族に復讐する為に組織を作りたいというから協力してやった。ここの資金はすべてオミの財産で賄われている」

「へええ…そうだったんだ」

「さらに言うと、この契約は復讐が終了するまでなので、長引けば長引くほど、報酬は目減りしていく」

「そいつは大変だ。さっさとやらないと」

「あいつ、趣味でF弾とかCN弾とかおもちゃのように買いやがるし……」

「そういうわけで、さっさとやってくれ。というか、たぶんカゲミツが手に入ったらあいつの気が済むと思うよ。とにかく……頼む」

最後の頼むには懇願の色さえ含まれている。

「わかりやした。ところでアニキ……。親分のほうにはなんて言ってあるんですか?」

「あっちには、上納金たっぷり収めているので、何とでもなる。というかここで、アニキと呼ぶな」

「あ、すみません。アマネさん」

ちなみに、アマネはとあるマルボウの金バッチだったりする。

10年前にすでに、ベンツ乗り回すコワモテさんなんだから、かなりの偉いさんだ。

お気に入りであることをいいことに好きなことばかりしているというのは、あっちの世界では有名な話だ。

ま。ここでは関係ないのでこの辺にしておく。






さて。
そのころのオミとヒサヤ──。

「ねえ、オミ……。この方法でカゲミツがお前になびく可能性は皆無だと思うんだけど……」

「いや、そんなことはないはずだ」

「ど、どうしてそう言い切れるの……」

「イチジョウ侯爵を襲うとするだろ? すると、カゲミツが警備で来る! そして、そこで侯爵が死ぬ…。すると傷心のカゲミツは俺のもの!ゲッチュウ──!」

「いや……。確実に恨まれるだけだと思う」

「いいんだ……。恨めば恨むほど、カゲミツの俺への想いが深くなる」

「……ベクトルが逆方向な気がするけど」

「愛と憎しみは紙一重って言うだろ」

「………」

もやはこの人に通じる言葉はない……。









そんなこんなで、襲撃当日。

守備は上々で、あとは侯爵にとどめを刺せばいいだけだった。

それに、タマキが、うまい具合に告白の場所までお膳立てしてくれていた。

なのに……。

「カゲミツとは友達だったんだろ?」

「俺とカゲミツは友達? 笑わせる…そんなの全部まやかしだ!」

それを、イアモニで聞いていたナイツのみんなが思った。

(おーい……。ここは、素直に告れば好感度あがんじゃないの?)


挙句に、もたもたしているうちに、アラタに拳銃奪われて、レイのお陰でなんとか逃げることができた。



「好きな相手前に、なにしてるのさ」

レイに呆れ声で言われる。

「だって、俺、シャイだから…本人の前では何も言えないんだも〜ん」

泣き崩れるオミ。


(アホだ……)

(こいつ、心底アホだ……)

(アホに違いない)

ナイツの誰もがそう思ったが、口には出さなかった。











そして、またいつもの朝が来る──。


「諜報! 今日のカゲミツの朝食は?」

「ベーコンレタストマトサンドとカフェオレです」

「ああ〜。もっと食えよ〜カゲミツ〜。」

「あと、この間の盗聴した分、焼いときました」

「あ、サンキュ」

プレーヤーからカゲミツの声が流れてくる。

『カゲミツはオミのことが好きだったんだな』
『どうなんだろうな。あのころ、他人なんてどうでもよかったのに、あいつはどんなに邪険にしても話しかけてきた』
『俺には真似できないから羨ましかったのかもな』

「カゲミツ〜。好きなら好きと言ってくれれば〜」

ヘッドホンを付けたまま、床を悶え転がっている。

それから、はっと我に返って言った。

「諜報! グッジョブ! ボーナス20%アップだ」

「どうも」

喜んでいいのか、悲しんでいいのか。

こんな、リーダーの元で働いている自分が悲しくなる。










(こうなったら、さっさとカゲミツを拉致って、人身御供にするしかない)


ナイツオブラウンドの面々は、誰もがそう思ったのだった。

2010/05/01

(深山さんからのリクエスト)

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