Cage2-2 | ナノ
寮の部屋に着くとベッドに突き飛ばされ、スプリングがギシ、と音を立てた。体の上に乗られてマウントポジションを取られるとどうしても怯んでしまう。


「黒田を誘惑してどういうつもり?」

俺の頬を撫でながら紡いだ誠の言葉の意味がよくわからなくて上手く返事が出てこない。優しい口調なのに声は冷たく、口以外は笑っていない顔の表情からも怒っているのは明らかだった。


「俺だけじゃ足りなかった?初めて後ろ弄られてザーメン垂れ流しながらイッちゃうような淫乱だもんね。黒田のちんこも突っ込んでもらうつもりだったの?上の口からも下の口からもザーメン飲んで気持ち良くなりたかった?」
「な、に…言って…」
「黒田に抱きついておねだりしてたよね?黒田の奴、鼻の下伸ばしてデレデレしやがって。クラスの奴らも優のことやらしい目で見てた。こんなキスマークだらけのえっちな体で登校されたら誰だって勃っちゃうよ。俺休めって書いたよね?」
「………」
「浮気はよくないよ、優」
「っ…、は…?」


誠がまくし立てている話の内容が支離滅裂で頭に入ってこなかった俺は、その一言で我に返った。
まさか、昨日犯されて苦し紛れに言った俺の言葉が鵜呑みにされてるなんて思わなくて困惑する。


「恋人以外に色目使うなんてビッチのすることだ」
「恋人じゃない!付き合ってない…っ!」
「…昨日付き合うって言ったよ」
「あんなの…っ、無理やり言わせたんだろ!無効だ…、誠なんかと付き合わない…っ!!」
「照れてるの?昨日の優凄かったもんね」


楽しそうに言いながらシャツの裾から手が差し入れられた。ひんやりした手に肌を撫でまわされ鳥肌が立つ。制止させようと誠の腕を掴んで押し戻そうともがく。恐怖によって奥に押し込められていた怒りが爆発して俺は叫んだ。


「…っ、やめろ!触るな変態ッ!!」


もうこいつは俺の知ってる誠じゃない。強姦魔に情けをかける必要はないと自分に言い聞かせて容赦無く暴言を吐きかける。


「さわんなよっ!気持ち悪い…っ」
「優」
「いやだ!俺の視界に入るなっ!気持ち悪い…、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!変態!ホモ!」
「優!」


バシンッ!
耳を貫いた大音響と、脳みそを揺さぶるような激しい衝撃に一瞬思考がフリーズした。右に勢い良く吹っ飛ばされた頭が少しずつ感覚を取り戻し、やがてじんじんと熱を持って痛み出す左頬に、誠にぶたれたことを理解する。目から生理的な涙が流れてシーツを濡らした。


「…、ぁ……ぅ…っ」
「やっぱりダメだ、繋いでおかないと…」


殴られたショックで呆然とする俺の耳に誠の呟くような小さな声と、かちゃん、と金属同士のぶつかるような神経質な音が流れ込んできた。
殴られた頬を庇うように覆っていた両手が誠に捕まり、頭上に持ち上げられた。右手首に冷たい何かが触れ、不思議に思って視線をそちらに向けると俺の右手には銀色の手錠がかかっていた。

「…っ!?な、なに…っ、いやだ…!」
「優がわがままだからいけないんだよ」

驚いて手を引っ込めようとするが、誠が素早く手錠の右手と左手の輪の間の短い鎖をベッドの支柱の一本に通し、もう一つの輪を左手首にかけると、このベッドから逃げる術が無くなってしまった。手を激しく揺らしてもがいても、ガシャガシャ音を鳴らすだけで輪が外れる様子もなかった。


「ちゃんと躾してあげるから安心してね。」


誠の顔が近づいてきてキスされる、と咄嗟に顔を逸らした。けれどすぐに顔を掴まれ正面を向かされると口に貪り付かれ口内を犯される。しつこい接吻に呼吸がままならなくなって誠が口を離す僅かな瞬間に急いで酸素を取り込んだ。
シャツの前を開かれて乳首を摘ままれると意図しなくても体が跳ねる。体を撫でられながら首に吸い付かれて新しいキスマークが増えていった。


「…やめろよ…っ、ほんとにいやだ、いやだ…」
「ダメだよ。恋人に暴言吐くような子にはちょっとお灸を据えないとね」


誠は俺の足の間に割り入ってあっという間にズボンと下着を取り去り、ペニスを緩く揉み始めた。優しく触る程度だった刺激が段々強くなりペニスが勃ち始めると本格的に扱かれ、我慢したくても口から吐息が漏れるのを絶えられなかった。絶対に逃げようと思ってたのにあっさり捕まった自分が情けない。だけど手首に嵌められた手錠のせいでこの状況から脱出するのは不可能に近いと頭の隅で諦め始めてる自分もいた。まだ認めたくないけれど。


「う…っ、ん、やだ…っ、あ…」
「気持ち良くするためにしてるんじゃないんだけどな」

苦笑して誠が俺から離れた。ベッドから降りると机の上の小さな白いダンボール箱の中から何かを取り出して戻ってくる。
ひとつはボトルに入った液体、もうひとつは細長い棒。銀色のそれは金属で出来ているようだった。

ボトルの中身のトロついたローションのような液体を俺のペニスに垂らして、数回扱くと先端に細い棒をピタ、とあてがった。固くてひんやりとした感触にペニスが小さく震える。


「な、なに…っ、なにそれ…」
「こうやって使うんだよ」


ぐり、と棒の先端がペニスの先の僅かな穴に挿入され始めて俺は言葉を失った。だってそこは尿を排泄するための穴で、そもそも棒が入るような太さじゃない。誠のしようとしている恐ろしいことを理解してしまった俺は恐怖で体が硬直した。


「う、うそ、や……、…っ」


目を見開いて喉からか細い声を振り絞る俺の口に、誠が軽くキスをして笑った。逃げなきゃって体がSOSを出してるのに手足が全く言うことを聞かないし、動かせたとしても手錠がある限り逃げ出せない。絶望的な状況に頭の中がパニックになってる俺のペニスに、容赦無く一気に棒が埋め込まれた。
ずぶぶぶぶッ


「ぎっ、やぁぁぁぁぁああ゛ッ!!」


ペニスが左右に引き裂かれるような痛みに体が引き攣り顎が反ってベッドの支柱が視界に入った。だけどそれもすぐにぐにゃりと歪んで、自分が泣いてるとこに気づいた。
全身の血がそこに集中しているみたいだ。ずぽずぽと上下に棒を動かされて圧迫感に目眩がする。


「…ひ、いだっ、痛いっ!いぁ゛あ゛!」
「お仕置きなんだから痛くないと意味ないじゃん」
「ぬ、ぬい、あ゛っ、いやだぁッ」
「暴れると怪我するよ、じっとしてて」

人工的に作られた棒が体の中に埋め込まれる感覚が怖い。ペニスや乳首を触られるのも気色悪くて嫌だけど、体の内側に侵入されるのは得体の知れない恐怖感がある。
苦痛に跳ね上がる俺の体を誠が手のひらで押さえて、その手が上の方に上ってくる。反って無防備になった首に手が這わされてゾワゾワした。


「ぬい、ぬい゛て…っ、ぬぃてぇぇッ」
「じゃあ抜くよ〜ほら」
「ぅあっ、あ、あ〜…っ」

完全に埋め込まれた棒を誠が引き抜く。ずろろろ、とローションと俺の体液を絡ませて水音をたてる音がいやらしかった。
ペニスの中が擦られてゾクゾクと背中に寒気が走る。早く全部抜いて、と目を固く瞑り耐えていると、誠がつまらなそうにため息を吐いた。


「やっぱやーめた」
「ああぁあ゛っ!!いぁ、やぁああ!!」


ギリギリまで抜かれた棒が一気に尿道を貫く。細かく痙攣する太もも
円を描くようにぐり、と穴を広げられると違和感と不快感に引き攣った悲鳴が喉から吐き出た。


「はひっ、ひぐ、ぅうううう゛っ!」
「優、浮気してごめんなさいは?」
「いぁっ、いやらぁ゛ッ、ひ、やぁぁあッ!」
「……あっそ、じゃあこのまま入れるよ」


誠がベルトを緩めてズボンのファスナーを下ろしペニスを取り出す。腰が浮かされ熱を持った雄が穴に添えられると昨日の恐怖が鮮明に蘇り呼吸がうまくできなくなる。


「ぁ…っ、う、や……っ、ゃ……」
「今日は慣らしてあげないから」


まだヒリヒリと痛んでいた中に再び凶器が突き立てられ、体を裂かれるような激痛に全身が硬直した。


「やぁあぁぁああ゛っ!!いぁ゛、いあだぁあ゛っ!」
「やっぱ狭…、」
「ぐるしぃ゛、ぬい、ぬいて…っ、やだッ」
「昨日もそれ言ってた…、でもすぐアンアン喘いでたよね」
「いやぁ゛、いだ、いだいぃっ、」


痛みと不快感に身体全体が拒絶の意思を表しているのに、棒が刺さり無理やり芯を持った状態のペニスだけは萎えることなく強制的に立たされていた。
後ろと前両方からの痛みにとっくに俺の体は耐えられる限界値を超えていた。目に留まりきらなくなった涙が頬を流れ、またすぐに目玉を大量の水が覆う。滲んだ視界に映った誠の顔は、確かに笑っている。


「はぁ…っ、ほんと可愛いなぁ、」
「やめ、やめ゛で…っ、いだぃ…っ、い…っ、いだ…っ」
「俺、優が泣いてる顔が一番好きかも…俺だけが知ってるって感じがする」
「ひっぐ、うぇ…っ、…あっ、い゛…っ!」
「………ああ、でも黒田には見せたんだったよね、泣き顔」


むかつく、と小さく呟き腰を掴んでいる誠の手の力が強くなる。腰を引き俺の中から一度ペニスをギリギリまで引き抜き、力一杯俺の腰を自らの体に引き寄せると同時に勢い良くペニスを埋め込んだ。


「あ゛っ、ぁぁああああぁッ!!」


がっちり掴まれ腰が浮く。誠のペニスが根元まで入っているのが中の感覚と太ももに密着した誠の腰からわかった。タチが悪いことに昨日さんざん責められた俺の弱いところを狙った挿入だ。
一突きされるたびに背筋がゾクゾクして目の前が霞む。

「あっ、あーっ!!やっ、やめ、やぁぁあっ!!」

ベッドが大きく音を立てるほどの激しいピストンに、棒が刺さったままの俺のペニスも揺れ、その刺激がますます尿道の中をいたぶった。痛いのと苦しいのと気持ちいいのが同時にやってきて辛い。


「あっ、あんっ!あひぃ、やんっ!も、やぁ…っ、」
「ねぇ、黒田に心変わりしわたけじゃないよね…っ?俺の気が引きたかっただけだよね?」


心変わりも何も最初から誠のとこだって黒田のことだって恋愛対象としてなんて見てないのに。恋人ごっこを続けようとする誠に苛立ちが募る。


「お、れは…っ、ホモ、じゃなぃ゛っ、あうっ、ひぁぁあッ!!」
「へー、ホモじゃないのにお尻にちんこ突っ込まれてあんあん喘いじゃうんだ、優は」

茶化すように笑う誠のペニスが際限なく誇大して俺の気持ちのいいところを掠めやすくなる。電流が走るような快感に体が強張り、限界が近いこと悟った。


「あぁあッ、も、やだぁあっ、あっ、やんっ!」
「あ、もうイきそう?…このまま後ろだけでイけるかもね」


誠の言葉に、棒の刺さったペニスに誠が一度も愛撫をしていないことに気づいた。このままだと本当に俺は尻の穴だけでイってしまうかもしれない。きっともう戻れなくなる。頭を振り乱して抵抗しても顔を押さえつけられ唇を貪られて終わるだけだった。


「んぶ…っ、ぅう、んんんっ…、はぁっ、あ、あぁああ!!」
「…っ、優、イっていいよ、ほら、ちゃんと見ててあげるから…」
「あっ、いやっ、いやぁぁぁあ…っ、…っ、やぁぁああ…ッ!!」

一際大きな律動で、いいところを抉るように突き上げられ、ガクガクと全身が痙攣する。限界点まで溜まった快感が弾けて脳天まで届いた。
けれど、今までのと何か違う。快感が大きすぎるし、余韻がいつまでも後を引く。


「え、ぅ…、うぁ、なに…これぇ…っ…、あ……」
「……ドライでイッちゃった?あは、すご…ほんとにあるんだ…」


そして何より、ペニスの先から精液が出ない。だけどそれは棒で堰き止められているせいじゃなかった。精液が、出ない。出せない、ではなく出ないのだ。なんで、どうして、と混乱した頭で考えてもわからなかった。これは確かに絶頂のはずなのに、精液が出ないなんて、だって、これじゃまるで……



「女の子みたいだね」


クスクス笑う誠の言葉に俺の中の何かが崩れた。嫌な汗が伝って体がガタガタ震える。違う、ペニスに変なものがささってるから、だから。これを抜けばちゃんと射精できるはずなんだ。違う、俺の体はおかしくない、ちゃんと男だ、棒を抜いて、そうすればきっと……


「今日はお仕置きだからね、出させてあげないよ。ドライで何回イけるか試してみよっか?」


体が変わっていく恐怖に怯え、縋るような目で見つめる俺に、誠は絶望的な言葉を吐いた。


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