Cage2-3 | ナノ




「やぁーっ!!ひぁ、あ゛っ、あう゛、もぉらめぇ…っ、やぁぁあんッ!!」
「あー…、またイった。」


ひたすら中だけを刺激され、射精しない絶頂を六回も繰り返し、既に頭は正常な思考ができない状態になっていた。喘ぎすぎて掠れた声で制止を懇願しても、誠の腰が止まることはない。過ぎた快楽が苦痛に変わったのは、もう二十分も前のことだ。



「も、やらぁぁあ゛っ!イきたくな、いッ、もぉむりぃ…っ、ああ゛っ」
「ちゃんと謝ってくれたら許してあげるよ、もう浮気しないって約束したらね」
「ひぅ゛っ、うぁぁ゛、あんっ、」
「聞いてる?あー、もうよだれ垂らしすぎ…優って唾液の量多いよね」

クスクス笑って俺の口の中に親指を突っ込む。この唾液でドロドロな口内に負けず劣らず、後ろの穴も誠の精液と俺の腸液が混ざり合って、動くたびにぐちゃぐちゃと生々しい音が響く。

繰り返す絶頂に段々体力が磨り減り抵抗の力が弱まる。認めたくなかったけれど、手錠をガシャガシャ鳴らして暴れたところで外れるわけがないのも、誠の下から逃げられるわけがないのも俺は痛感していた。

「ほら、もっかいくらいイけるでしょ」
「ひぃっ、うあ゛ぁっ、むり、やめ、やめてっ、やらぁぁああ゛っ!!!」

もう限界だ。これ以上されたら本当にどうにかなる。気持ちがよくて頭が変になりそうなのをギリギリの理性で繋ぎとめているけれど、もう壊れる。この快楽地獄からの解放を求めて、俺は無我夢中で叫んだ。


「ごえ、ごめんなさい゛!ごえんなさいごぇんなしゃいぃ…ひぁあっ!」
「何がごめんなの?ちゃんと俺の目を見て謝って。」
「うあっ、うわき、浮気してごえ、なさ…、も、しないから、ゆるひて、ゆるひでっ!」

誠がこんなことをするのは、俺が黒田に色目を使ったと思ってるからだ。それを浮気だなんて思ってないけれど、誠を鎮めるためには謝るしかない。違和感を覚えながら誠が促した言葉を喚くと、耳元で小さく囁かれる。


「絶対だよ?」

必死に首を縦に振る俺を見て満足したのか、誠のペニスが俺の中から抜かれる。二回分の誠の精液がドロドロと零れる感触にゾワッとしたけれど、行為をやめてくれたことにホッとした。


「じゃあ今日はここまでにしようか?俺もちょっとだけ疲れたかも」


力なく横たわる俺の足を大きく開かせ、ペニスに刺さった棒を引っ張り上げる。中が擦られる感覚に喉から引きつった声が出たけれど、全て抜き取られ無機質な棒がシーツの上に放られると、安堵と屈辱に新しい涙が溢れた。


「優、優…泣いてる?」
「うっ、う゛ぅ゛ぅぅ…ッ」


誠の声が怖い、誠の目が、手が、足が、口が、俺の体内を犯すペニスが、誠の全てが怖くて体の震えが止まらなかった。同じ空間にいるのすら苦痛で、一刻も早く逃げたいのに固くて冷たい手錠がそれを許してくれない。
ギシ、と音を立てて俺に覆い被さる誠に、体を強張らせて顔を伏せ、きつく目を瞑るのが俺の今の精一杯の抵抗だった。


「可愛い、可愛い、可愛い…優、好き、好きだよ…」
「う…っ、ひっく…、やだ…やだぁぁ…」
「優が女の子だったらよかったのに。そしたらちゃんと孕ませてあげられたのに」
「…っ、ぐす…っ、…は…」
「どうしたら優は俺と一緒にいてくれるの、……この足、折ってどこにも行けなくしちゃおうかな」
「ひぃ…っ、や、や…っ!!」

狂気を孕んだ誠の声が耳元で囁かれる。俺の足を撫で時折グッと力を入れる素振りを見せられると本当に折られてしまうんじゃないかと怖くなる。
誠への怒りの気持ちは完全に消え去ってしまった。今あるのは恐怖と絶望、そしてわずかな希望だけだ。誠が怖い、逃げられない、嫌だ、もう嫌だ、助けて、怖い、痛い、悲しい、助けて、誰か、誰か…。


その名前が出たのは完全に無意識だった。


「…ひぐっ……、た、たすけ…っ、たすけて………っ、くろだ…っ!」


俺が今縋れる存在、誠以外で唯一最近喋った相手、それだけだ。深い意味なんてなかった。だけど。


「なにそれ」


驚くほど冷たい声が頭上から降ってくるのと同時に、俯いて泣いていた俺は髪を掴まれ誠の方を向かされる。バシッ!と頬を張り飛ばされ、本日二度目の殴打にショックを受ける間も無く、俺の首に誠が手を伸ばし締め上げた。


「……ぁ、あ゛……っ、…っ」
「ねぇ、なんで黒田なの」
「はな゛…し……っ、あ゛…」


気道を塞がれ、頭に血が登った。誠の手の力がどんどん強くなって、俺の頭はベッドに沈んでいく。口を開けて酸素を取り込もうとしても何も気管に入ってこない。顔が熱い。それとは対照的に手足の指先が急激に冷えていくのを感じた。


「優が好きなのは俺でしょ?だって121回も俺の名前呼んでくれたし58回も俺に笑ってくれたし76回も俺の体に触ったし61回も俺を誘うような目ぇしたよね」
「……し、………っ、ぬ゛……っ」
「ねえ俺の何がいけないの、こんなに好きなのに、何が不満?俺ちゃんとなおすからさ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ…っ、優、返事してよ、早く答えて、答えろ、早く、早く早く早く早く早く……」
「………が…っ、……」



瞳孔が開いた目に歪んだ口元、誠の顔が怖くて見たくない。けれどもう瞼すら自分の意思で閉じれないほど俺の体は硬直していた。泣きすぎて垂れ流しだった鼻水が逆流してきてツンと痛い。次第に耳の中まで痛くなって、甲高い変な音も聞こえ始めた。死にたくない。目の前が真っ暗になる寸前のところで、誠の手が離れた。



「……はっ、はぁっ、は……、あ……、ごほ…っ、げほぉっ!!」


慌てて酸素を肺に取り込む。が、うまく呼吸が出来なくて噎せてしまった。横を向いてはぁはぁと呼吸を整えようと必死で口を開ける俺の首に、再び誠の手がかかる。撫でるような優しい手つき、だけどその手がさっき俺の首を捻り、命を奪おうとした。


「優、」
「……あっ、あ、ぁぁぁあああああ゛!!!ご、ごめ、ごめんなさいっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさぃぃいいいいいいい゛……っ!!!」


死の恐怖を味わった体が、思考が働くより先に行動してしまう。俺の口はひたすら謝罪の言葉を叫ぶ。誠の機嫌を損ねたら本当に殺されてしまう。怖い。嫌だ。死にたくない。全身が誠に許しを請うことに神経を集中させているのがわかった。


「すき、すきですっ、まことがすきです、すき、すき、すきだから…っ、ゆるじて、ひぐっ、う、うぁぁあああ゛ぁん!!」


おそらく誠が望んでいると思われる言葉を喚き散らし号泣する俺の頭を、優しく撫でられる。それにすら体は過剰に反応し、ビクッと跳ね上がり震える肩を落ち着かせようと体を固くした。


「……嬉しいな、やっぱり言葉にしてくれなきゃわかんないからさ、これからはちゃんと言ってね?」
「は…っ、ひっく…、う゛ぅ、すき、すき、すき…っ、ひぐっ、うぇぇ…っ」
「俺も大好きだよ、幸せだね、優」


穏やかな笑顔を浮かべ、俺の体を愛おしそうに抱き締める誠は、はたからみたらとても人を躊躇なく絞め殺そうとするような人間には見えないと思う。実際俺は誠の中の狂気に気づかず三ヶ月も共に過ごし、こうして蹂躙されている。


この寮の一室に入った時点で、俺には逃げ場なんてなかったのかもしれない。例えもう一度初めて誠に出会ったあの日に戻れたとしても、何度やり直したところで結果は同じだろう。俺は初めからこの狂った獣に捕食される運命だったんだ。きっともうこの檻から逃げられない。
体の震えに合わせて控えめにカシャカシャ鳴る手錠の音と、すき、すき、とうわ言のように呟く俺の声だけがいつまでも部屋に響いていた。


end.
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