Cage2-1 | ナノ
拘束/尿道責め/ドライオーガズム/暴力/首締め




目が覚めると誠はいなかった。
体を動かすと全身が怠く、なにより後ろの穴に走った激痛が昨日のことが嘘じゃなかったことを証明していた。だけど穴の中に出されたはずの誠の精液は綺麗さっぱりなくなっていて、気絶している間にここに指を入れられて掻き出されていたのかもしれないと思うと吐き気がする。
時計に視線を向けると13時を回っていた。


「……学校」


体が酷くしんどいけれど、このまま誠が帰って来るのを一人で待つなんて気が狂いそうだった。午後の授業だけでも出て、そして誠とは部屋を別けてもらえるように寮長先生に相談しよう。シャワーを浴びようと体を起こすと枕元にメモが置いてあることに気づいた。
『今日は休んでてね。』
見慣れた誠の字。誰のせいでこんなに体がつらいと思ってるんだろう。酷くイライラしてメモを握り潰し、ゴミ箱に捨てた。


脱衣所の鏡で改めて自分の体を見て愕然とする。首から胸にかけてキスマークがびっしり付けられていて、異常な執着を感じるほどの夥しい数に目眩がした。
顔は憔悴して青白く、虚ろな目の周りが真っ赤に腫れていてみっともない。


「…ぅ、ううぅぅ…っ、なんで俺が…っ」


その場にへたり込んで呻き声を上げる。泣きたくないのに涙は目に留まることなく床に落ちる。
悔しくて悲しい。
あんな風に俺の体を弄んだ誠も、誠にいいようにされた自分も。
どうして自分がこんな惨めな思いをしなくちゃいけないんだろう。誠が自分をそういう目で見ていたことも、自分がそのことに気づかず誠を慕っていたことも許せなかった。一方的に気持ちを吐き出して体を押さえつけて言いなりにさせるやり方にも反吐が出る。よりにもよってあんな形で蹂躙するなんて頭がおかしい。俺の男としての大切なものを踏みにじって笑ってるんだ。
バカにしているとしか思えない言動にふつふつと怒りが湧いてくる。
シャワーを浴びて髪を乾かすと、キスマークが見えないようにワイシャツのボタンを一番上まで閉めて学校に向かった。




学校に着いたのは本日最後の授業が始まる五分前だった。廊下で担任と会い、体の心配をされた。誠は風邪だと伝えていたらしい。六限だけでも出ます、と答えて後ろのドアから恐る恐る教室に入ると、誠はクラスメイトと談笑していた。幸い誠の席は俺より前の方にある。気づかれないように席に着いたが、誠と話していた一人があれ、佐倉じゃん、と声を上げると誠がこちらを振り向いてしまった。
その目と視線があった瞬間、体が金縛りにかかったように動かなくなり、冷や汗が背中を伝う。文句の一つでも言ってやろうと思っていたのに、いざ対峙してみると体に染み付いた恐怖が体の自由を奪っていた。誠が椅子から立ち上がり、こちらに向かってくるのをただ固まって見ているしか出来ない。


「授業始めるぞー」


あと1メートル、というところで先生が教室に入ってきた。誠は何か言いたげに口を開けたが、すぐに俺に背を向けて自分の席に戻った。やっと動けるようになった俺は大きく息を吐いて先生のタイミングの良さに感謝した。






授業が終わり、終業の号令を済ませると俺は逃げるように廊下に飛び出した。とにかく今は誠に捕まらないように最善を尽くすしかない。誠と下校時間はズラして一人で帰り、そのまま誰かと部屋の交換を交渉しよう。しばらく走り教室が十分遠ざかったところで後ろを振り返るが誠の姿は無かった。安心して走るのをやめ息を整える。しばらく散歩して時間を潰そう、と階段を上がる。できる限り教室とは距離を置きたかった。
階段を登り切ると屋上のドアがあり、ここで行き止まりかと足を止めた。屋上は立ち入り禁止でいつも鍵がかかっていて、特別な時だけしか入れない。だけど何気無く手にしたドアの鍵は何故か開いていて、不思議に思いドアを開ける。
屋上は誰もいないように思えたが、ぐるりと一周回ってみようと歩き出すとすぐに人影が見えた。柵に寄りかかってぼんやりと空を見つめているその人に声をかける。

「あの、」
「うわっ!おどかすなよ!」
「あっ…ごめん、」
「あれ、佐倉?」


振り向いた顔には見覚えがあった。同じクラスの黒田だ。一度科学の実験の班で同じになったことがあった。不良というわけでもないけど、何処か飄々として掴み所のない性格だ。



「ここの鍵どうしたんだ?」
「ピッキングした」
「ええっ!?」


黒田は先が複雑に折れ曲がった針金を手に持っていて、くるくると回しながら悪戯っ子のように笑った。笑う顔は初めて見るかもしれない。俺がもともとクラスメイトとの付き合いが希薄なせいもあるけれど、黒田の笑顔はなんだか想像できないと言うか、少なくとも俺の中ではそういう印象だった。


「いいだろ、ココ。サボるのにはもってこいだぜ」
「サボり…」
「もうテスト終わったのに補講授業出るのかったるいし。あれ、佐倉もサボりじゃないのかよ?」
「や、授業終わったからちょっと散歩で…」
「そっか、まぁ佐倉は真面目だもんな」


黒田は再び小さく笑って少し遠くを見た後、急に神妙な面持ちになり、こちらを真っ直ぐ見つめた。


「あのさ、こないだの靴箱のこと…」


靴箱、という単語に体が大袈裟に震えた。白くて粘ついた青臭い液体をかけられたローファーが鮮明に蘇る。
あの日は気が動転していて、あの場に誰と誰がいたかなんてはっきり覚えていなかった。だけどこの口ぶりからして彼はきっとそこにいたのだろう。
平静を装おうとしても震える体を抑えられなかった。自分の呼吸の音がやけに大きく聞こえてうるさい。口の中がカラカラで辛い。


「なんていうか…うまく言えねーけど、大丈夫か?」


大丈夫なわけない。あの靴の件も含めてのストーカーの犯人が友達で同室の誠だった挙句、レイプまでされたなんて誰が言えるだろうか。ましてやまともに喋ったのは今日が始めてのクラスメイトだ。何も言えなくて俯く俺に、黒田の優しく心配そうな声が頭上から降ってくる。


「なんか今日も顔色悪いし、」


右肩に手が乗せられ、俺より少し身長の高い黒田に下を向いた顔を覗き込まれた。心なしか顔が近くて怯んでいる俺に気づいていないのか、黒田は一方的に声をかけることを止めない。


「佐倉って繊細そうっていうか、頼りない感じするから心配でさ」


もうこの話は終わりにしてほしかった。嫌な記憶に涙が滲み、頭も痛くなってくる。とにかく大丈夫って言わなきゃ、顔を上げて無理やり口を開くが、本格的に気分が悪くなって思わず体がフラついた。自分で支えられなくなった体は前によろけ咄嗟に受け止めてくれた黒田に抱きつく形になってしまう。


「わっ、おい、大丈夫かよ?」


黒田を見上げ大丈夫、と言うつもりが、喉の奥から嗚咽がこみ上げてきて上手く言葉にできない。目に留まりきらなかった涙がぽろっと零れた。黒田がハッとしたように少し目を見開く。


「くろ、だ…おれ、」
「優。」


背後からの声に体が跳ね上がった。
固まる体に鞭を打って後ろを振り返ると、二人分の荷物を持ちにこにこと笑う誠が立っていた。


「こんなとこにいたの?」
「まこ…と、」
「早く帰ろう」


言い終わると誠は黒田には一瞥もせず俺の腕を掴み引っ張って歩き出し、屋上のドアから階段を早歩きで下った。
背後からおい、と制止する黒田の声が聞こえるが誠の足は止まらず、黒田も追ってくる様子はなかった。誠はそのまま階段を一階まで下る。靴箱を通り過ぎ校庭出ると地面が土ぼこりを上げて上靴を汚した。


「おい…っ、まことっ!靴…っ」
「………」
「いたいっ、はなせよ!」


上靴のまま校門を出て、引っ張られながら寮への帰路を辿った。腕を振り払おうと体を捩っても掴んだ手を離させようとしても無駄で、
周りは不思議そうに俺たちを見たけれどふざけてるだけだと思われたのか誰も止めたりはしなかった。



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