cage 1-1 | ナノ
ストーカー/レイプ/自慰強要/処女喪失/射精管理



視線を感じる。
それも体の隅々まで舐め回すような、執拗なものだ。
居心地が悪くなり自然と歩を進めるスピードが早くなる。7月も半ばに入り、夕方と言えども気温は高く制服が汗で肌に張り付く。校門を出て五分ほど歩けば寮に着く。早くこの奇妙な視線のプレッシャーから逃れたかった。



俺、佐倉優がこの全寮制の男子校に二年生の五月という中途半端な時期に編入したのは、少し複雑な事情があった。
五歳の時に両親を事故で亡くし、両親に代わって俺を育ててくれた母方の祖母も15の春に他界した。初めは父方の叔父の家庭に引き取られたが、もともと人見知りで引っ込み思案な俺はなかなか馴染めず、次第に親戚中をたらい回しにされるようになった。それでも両親の残した財産と保険金目当てなのか、不思議と施設には入れられなかったのは幸か不幸か。
最終的に俺を引き取ったのは、今まで一度も会ったことすらなかった遠方の親戚だった。厄介払いのつもりか、その家からは新幹線で一時間ほどの距離のある、全寮制のこの学校に通わされることになった。


『年末年始も長期休みも帰ってこなくていいからね』


養母の放った冷たい言葉と表情が忘れられなくて、誰からも必要とされないことが悲しくて、この学校で上手くやっていけるか怖くて、とにかく不安な気持ちで校門をくぐった。


でも意外にも、神様っていうのはそんなに酷い奴ではないようで。







「優、今帰り?一緒に帰ろうよ」
「あっ、誠…うん、どうせ帰るとこ一緒だしな」

後ろから肩を叩かれ振り向くと、アッシュがかった茶髪に制服を緩く着崩した、鳴沢誠が立っていた。
いつの間にか不愉快な視線も消え、見慣れた誠の顔のおかげもあり安心して小さくため息を吐いた。


彼は俺のルームメイトで、入室の引っ越しの時からあれこれ世話を焼いてくれた。人見知りで初対面だとなかなか上手く話ができない俺にイラつくこともなく、穏やかに微笑みながら次の言葉を待ってくれた。
幸いなことにクラスも同じで、最初の自己紹介の時もガチガチに緊張した俺に手を振って笑いかけてくれたおかげで、思っていたよりもしっかり「よろしくお願いします」の挨拶ができた。


誠はその人当たりの良さと柔らかい物腰の為か友人が多く、クラスで目立つ人気者では無いものの、周りからはかなり慕われていた。
容姿も自分や同級生よりも少し大人びていたし、考え方もしっかりしているので頼り甲斐があって、不思議と誠にはすぐに心を開くことができ、今まであまり語らなかった身の上話も話せた。
優しくて包容力があって頼れる。兄弟はいなかったけれど、もし兄がいたらこんな感じじゃないのかな、と勝手に思った。



「なんか優、最近少し疲れてない?」
「え、そんなことないけど…」
「でもちょっとやつれたって言うか…何かあった?」
「……実は、」

これが誠でなければただの夏バテだ、で誤魔化して済ませてしまっていたと思う。
俺はポツリポツリと最近感じる視線のことを話した。



数週間前から、誰かにジロジロと見られているような気がする。家にいる時は平気なんだけど、学校とか、登下校の時とか、ふとした時に穴が空くほど見つめられているような視線を感じる。
それだけなら俺の自意識過剰かもしれない、暑さで少し気がおかしくなっているのかもしれない。でもそれだけじゃなかった。

ある日寮の靴箱に入れられていた一通の手紙。

『いつも貴方を一番近くで見ています』

白い便箋にそれだけ書かれていて、背筋がゾッと凍る。封筒にまだ厚みがあることに気づくと、恐る恐る中身を確認する。

『…なんだよ…っ、これ…!』


写真。
思わず落とし床に散らばった10枚ほどの写真のその全てに俺が写っていた。
授業を受けているところ、昼食を食べているところ、ジャージに着替えているところ…。


それ以来視線は酷くなる一方で、写真入りの手紙も時々靴箱や机の中に入れられていた。
さらには体操着やハンカチ、タオルなど身の回りの物が無くなるようになり、どう足掻いても一つの答えにしか辿り着かなかった。




「それって…完璧ストーカーじゃん…」
「…やっぱそう、だよな…」
「なんでもっと早く教えてくれなかったの?」

眉間に皺を刻んだ誠に見つめられる。教えなかったことを怒っているというよりは、心底心配してるという感じだ。なんだかとても申し訳ない気持ちになった。

「…ごめん」
「……いや、こっちこそごめん、そんなこと普通言いにくいよね」
「………」
「とりあえず、何かあっても困るし、暫くは俺から離れないようにしてよ。登下校も一緒にしよう」
「え…」


視線は一人の時に強く感じる。
誠が一緒にいてくれたらいくらか楽になるかもしれない、けれど。


「俺、放課後は委員会とかで遅くなることあるし…」
「いいよ、教室で待ってる。あ、なんなら委員会の部屋まで迎えに行くし…」
「そんな、そこまで…悪いって」
「いいって、俺も心配だしさ。それに友達なんだから、もっと頼ってよ。ね?」


なんだかそこまで自分を心配してくれることが嬉しくて、友達という響きが嬉しくて、誠の言葉に甘えることにした。


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