兄弟だと思ってたら妹だった件 刀/麿そね♀/女体化
2022/10/08 19:17

 この度特命調査を経て政府からめでたく本丸へ配属になった。親友の水心子正秀とほぼ同時にだ。やっと前線で腕を振るえる機会が巡ってきた、と多少浮かれていたところで、源清麿は配属先の本丸を、その特性を思い出した。
 審神者は齢10にも満たない幼女で、顕現させる刀はことごとく女人の形を取るのだという。政府から引き渡された自分のような刀はそれに引きずられずに男性のまま。初期刀たる陸奥守吉行も男性の形をしていたが、その他戦場から拾う刀も鍛刀する刀も皆一様に女性であった。
 人間の女性との対話経験は乏しいとは言わないが、女の大所帯のなかに放り込まれるということがどういうことかを、水心子正秀も源清麿もまだ知らない。

 最初はやたらといい香りがするくらいのものを感じ取るだけだったが、数で負ける男士はほとんど肩身の狭い思いをする羽目になる。陸奥守吉行が審神者にせがんで女子禁制の離れの生活区を作らせるまでは、風呂の時間をずらしたり、こっそり男士同士で春本をやり取りしたりすることもあったらしい。
 いの一番にやって来た陸奥守吉行ですらそんな風に暮らしていたので、後からやってきた水心子や清麿が同じ暮らしをするまでに時間はかからなかった。
 審神者は陸奥守が居ないと不安がるが、最近ようやく女士の誰かが側にいれば眠れるようになったらしい。審神者も女子である、下手にくっついたまま過ごして距離感を測り間違えたまま育つのはよろしくないと政府側から指導が入ったこともあるらしかった。親兄弟のいない審神者に寂しい思いはさせたくないが、かと言って自分にべったりなまま育つのも、と危惧していた陸奥守は、今では近侍ではあっても審神者との触れ合いはきょうだい程度の触れ合いに留めている。この間は肩車してやったのになあ、と言っている。

 そんな日々にも慣れてきて、清麿はある日審神者と近侍に軽い頼まれごとをされた。長曽祢虎徹ー彼女もまた女士だーを呼んできてほしい。第一部隊長として夜戦に出てほしい、そのための軍議に参加を願いたい。そんな伝言を持っていく最中も、本丸の母屋はきゃあきゃあと女性特有のかしましさを清麿に浴びせていた。流石にもう慣れたので、すいすいと長曽祢の部屋まで歩いていく。ともに出陣したことはないが、長曽祢の起源は清麿とほぼ同一で、本丸に配属となった折に顔合わせをしている。清麿にとっては兄弟と言っても過言ではない刀だ。多少は気安く接することができる。親友たる水心子には流石に劣るが、それなりにいい関係を築いていた。そのはずだ。
「長曽祢、入るよ」
部屋の前にたどり着いて一言声をかける。しばらくした後、するりと襖を開けて出てきたのは軽装の長曽祢虎徹だった。
「清麿。どうした」
「軍議に出てほしいって。次の出陣について話があるって言ってたよ」
清麿は本丸に来たばかりで、まだまだレベルは低い。長曽祢はというと夜戦には出られるレベルだという。なかなか広がってしまった力の差が、清麿は少し恨めしかった。
「そうか。わざわざすまない」
「いいんだよ。今日明日という話でもないみたい」
襟を寛げて晒布を巻いた胸を見せる格好だったが、隙がそんなにはないので清麿もなんとも思わない。…この程度はもう見慣れてしまっていた。油断が過ぎる女士も居れば、肌を見せるなど死んでも御免だと言わんばかりの女士もいる。長曽祢はというと、どうも緩い方らしい。
 晒布を巻いた胸程度なら清麿も何も言わないが、その下の…合わせがずれて露わになった足は直視できなかった。
 断じて見ていない。筋肉の上にうっすら脂肪が乗った太腿の滑らかな肌など知らない。決して華奢ではない足の、日に焼けていない白さなんて清麿は知らない。
「ありがとう」
朗らかに笑う長曽祢の癖っ毛が揺れて、うん、と返事をするのもやっとのことだった。
 そうして襖が閉じられて、部屋から少し離れたところでひっそりと清麿は座り込んだ。
 気をつけるべきは僕なのかな。あの子に誰か立ち居振る舞いというものを教えてくれないかな。
 女士はともかく自分以外の男士にもあんな姿を晒しているのだろうか。それは、嫌なことだ。とてもとても。なにせ本丸にいる中では兄弟のようなものだ。今は女士だから妹のようなものだ。その妹があんな目に毒な姿を他の男子にも見せている? 冗談じゃない。たとえ水心子であっても許せない。
 しばらく座り込んでいた清麿が、着付けを直し部屋を出た長曽祢に見つかるまで、悶々とした時間を過ごしていた。

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