合意的に逆転を試みた結果がこちらです。(ディバゲ/アオアリアオ/R-15)
2015/12/30 13:44

※アオアリ前提のアリアオです。
※最終的にアオアリに落ち着きます。
※直接的な描写はないです。












「兄さんはずるいよ」顔を逸らしながら口を尖らせる弟に、アオトはぴたりと動きを止めた。押し倒したフローリングの上で、アリトンは不機嫌にアオトの腕を掴む。「僕だって兄さんを抱いてみたい」拗ねたように頬を膨らませるアリトンが珍しくて、アオトはすっかり目を丸くした。「…出来るの?」「出来るよ」兄さんと同じことをしたらいいんでしょ。既に決意に燃えているようで、アオトは笑いそうになるのを抑えながらアリトンの上から退いた。それでもさすが双子というのか、アリトンはそんな兄の様子に気付いて、むきになって兄の手首を捕まえた。そのまま自分の上に招くように抱き止める。
兄の重さを体で受け止めたが、どうにも軽くて心配になった。けれどもきっと、自分と変わり無いのだろう。だって、兄はいつも平気そうな顔で弟を支えているのだから。胸に顔を埋めさせて、首を僅かに持ち上げてアオトの額に唇を寄せる。それから髪の毛を耳にかけてやると、妙ににやついた兄の顔を目の当たりにした。「頑張れる?」「出来るって言ってるじゃないか」くすくす、幼い子が張り切っているのを見るみたいに微笑ましいという表情が、余計にアリトンを不機嫌にさせた。「僕だって兄さんのこと、どうにかしたいんだから」「もうなってるのに」「もっとだよ」「これ以上、どうやって?」首を傾げる仕草は、どうにもアリトンを誘っているようにしか見えなくて、そんな兄の顔を見たことがないアリトンは、馬鹿にしないでよ、と呟いてからアオトの服の中に手を滑り込ませた。


と、いうことがあってから、少し時間をおいて今に至る。何があったかは推して知るべし。詳細はともかくとして、双子は気付いたことがあった。

*

まるでからだを裂かれるような、酷い痛みが襲ってきて、あとはもうただひたすら耐えながら弟にしがみついていた気がする。はっきりした記憶が無い。それでも覚えているのは痛みだけではなかった。
喪失感と充足感を同時に味わうときが僕の人生に訪れるとはまさか思っていなかった。それでなくても僕は男で、そしていつもなら僕が抱く側で、はっきり言って僕は処女だった。過去形なのはつまりそういうことだ。
いつもよりどっと疲れた体を引き摺って、散らばった服を手繰り寄せる。隣には、俯せで気力も体力も僕と同じ程に使い果たしたアリトンがぐったりと肩で息をしている。はーっ、はーっという深呼吸みたいな息遣いが、弟の疲労を物語る。慣れないことをしたのは向こうも同じだった。

弟の蕩けそうな目を、思い出す。
うっすらとした涙の膜越しに僕を見る瞳が、いつもと同じだった。
普段なら僕に組み敷かれているアリトンの、僕を見下ろす顔はいつもと同じだった。
やっていることはいつもと逆なのに、まるで変わらない表情が、僕を落ち着かせてくれたのだ。
そのお陰で、断片的になら覚えていることもある。
キスはできるだけ深く長く。髪を撫でるときはゆっくりと。手を繋ぐときは力強く。抱き締めるときは離れないように。言葉は口に出さず、心は行動で表す。
いじらしいって言ったら、きっとアリトンは怒るだろうな。
ささやか過ぎる表現しか出来ない子。
もしかしたら僕が覚えていないだけかも知れないけれど。

弟の服を頭の上から落とすように渡す。うう、と呻く声が服に埋もれてくぐもって聞こえた。
「いまそういうのやめて…」
つかれた。そう言って、また息を吐き出す。今度のは盛大なため息だった。
薄い青のラインでチェック柄をつけられたシャツと、いつもの黒いジャケットの上からアリトンの頭を撫でる。
お疲れ様、と囁くように、唇だけで呟いた。
いつもこんな風な気持ちを、アリトンは感じているんだろうか。

*

兄さんが何を言ったか、なんとなくわかる気がする。自分だって同じはずなのに、僕の事ばかり気にかけるのは、昔から変わらない。嬉しい反面、優しすぎるそれは兄さんの悪癖でもあった。
そんな優しすぎる兄さんが、少しだけ貪欲さを見せるときは決まっていた。
強く手首を掴む、キスは勢いのままに、服はわりと早めに脱がす、でもからだに触れるときはしつこいくらいに、手は強く握って、くっつきあってお互いしか見えないくらいに抱き締めあう。
兄さんはよく僕をかわいいというけれど、本当は僕だって兄さんにかわいいと言いたかった。
そんな余裕もなかったのは、正直、僕が初めて兄さんを抱いたからだ。ぶっちゃけ童貞だった。過去形なのはつまりそういうことだ。
けれども、断片的になら覚えていることもあった。

兄さんの、ぎらぎらした瞳を思い出す。首に巻き付いた腕の先で、僕を捉えた目が、いつもと同じだった。
まるで今から食い尽くしてやると言わんばかりの目があまりにもいつも通りで、逆に安心してしまったのを覚えている。
そうなると、兄さんのいつもの行動を思い出すこともできた。
僕が普段兄さんにされていること。
髪を撫でる、涙を唇で拭う、首筋や肩や背中なんかを噛んだり、たまに少しだけ無茶なことを……やる勇気は僕にはなかった。兄さんが怪我をするのは嫌なので。

大切にされているのに、壊れるくらいに愛されているのを知ってしまった。
兄さんの内側に、どれだけの激流が渦巻いているのかというのを。
兄さんは優しすぎる。そのせいで感情をどう表現していいのかわからなくなってしまっている節がある。
普段が優しすぎる程に優しい癖に、僕を自らの激流の生贄にするのは、そのためだ。
頑なで不器用な人だ。


起き上がってふと隣を見ると、僕が踞って考え事をしている間に、兄さんはコップを二つと水差しを用意していた。あまりにも普段通りの行動だった。まるでさっきまで僕が抱かれていたような気分になる。
なにも言わずに差し出された水を受け取る。
「ありがとう」
口にすると冷たいそれが、何もかもを流していくように喉を通っていく。美味しい。
それを飲み干す頃には、兄さんはとっくにコップを置いて僕を見つめていた。
「どうしたの」「したい」何を、とは聞くまでもない。
「えっ僕疲れたから寝たい」「寝てていいよ、勝手にする」あれ、おかしい。
僕の手からコップが消えて、兄さんに手首を捕まえられて、いつの間にか背中は兄さんのジャケットを敷いた床と仲良くしている。おかしい。
「僕はよくわかったんだ、アリトン、君にどれだけ負担させてたか」よくない流れだこれ。「これからはもっと優しく大切にするから」目がそんなこと全然言ってないよ兄さんこわい。
「練習させてね」
「いやだ!!!!」
冗談じゃない。
兄さんの「優しくする」は、正直、つらい。
丹念で丁寧で、ぬるま湯に浸かるようなそれは、控えめに言っても焦らしプレイか何かだ。あれは消耗するとかそういうのを通り越して拷問と言ってもいい。しかも練習と言ったのだ。満足するまで離してもらえないのはよくわかった。
「あと僕さっきのでいってない」この期に及んでとんでもないこと言い出したやばい。
「なんで!!!」「"初めて"の時を思い出してごらん、君も同じだったから」今思い出したくなかったことを掘り返されて、正直穴を掘って埋まりたい。それができそうにないのでひとまず床に額を押し付けて耐える。
「じゃあ、僕も手で、やるから、許して」
「いいよ。寝てて。大丈夫だから」
兄さんの「大丈夫」は、良くない。やばい僕兄さんに殺される。死因は何になるんだ。考えるのも嫌すぎる。
「大切にするって言ったなら僕の話聞いてよ」
「君は割と素直じゃないから」
「あっじゃあもう激しくてもいいよ好きにして」
「うん、好きにしていいなら優しくするよ」
だめだ話が通じない。

「アリトン、君はわからないの?僕は凄くもどかしいのに」
知っている。"初めて"だとなかなか性感には程遠いその感覚では、早く解放してほしくてしょうがない。
「僕だって苦しいんだよ?」
抱き寄せられた足に腰を擦り付けられて、まるで兄さんの自慰の道具にでもされたような気分だ。
「きもちよくなりたいよね、一緒に」
「ふあ、」
肌を撫でられて無防備にも出てしまった声は今更なかったことにはできなくて、きもちよくなってしまったのも否定できなくて、口許を押さえてももう遅かった。





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冒頭のみツイートから引っ張ってきました。
アオアリ至上なんですが、こういうアリアオならまあ……いい……か?

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