第五話

元親は高揚している。
海ではなく陸で思いがけない極上の宝を見つけた。
そうさ、今までと同じだ。欲しいものは必ず手に入れる。
たとえそれが人ならざるものだとしても、だ。




「なぁ、アンタの名前長いから『チカ』って呼んでいいか?」
豪勢な夕餉に舌鼓を打っている所に唐突にそう言われた。
思わず箸を落としそうになった。
「なんだそりゃ・・なんか女々しくねぇか?」
でかい図体している自分に『チカ』とは違和感を感じる。
「俺のsenceを疑うのか?・・・・『姫若子』よりマシだろ?」
あまりの衝撃の発言に今度こそ箸を落とした。
「おい・・・っ!なんでそれを?!」
政宗はにぃっと笑って自分の左目をトントン、と指さした。
「俺は神だぜ?ちぃとアンタの昔を視させてもらった。随分cuteだったみてぇだな。」
「・・・・・・・。」
なんて龍神だ。よりにもよってあの頃の自分を見られるとは。
顔を真っ赤にして俯いている元親を政宗は面白そうに見ている。
「心配すんな。それ以外は視てねぇよ。チカ。」
いや、それが一番見られたくないんだが・・・。
項垂れる元親を横目に政宗は上機嫌に酒を煽った。
「ちなみに俺の事は『政宗』って呼んでいいぜ。特別に許可してやる。」
(俺が惚れてなかったらこんな横柄な奴許さねぇんだが・・・。まったく女王様もいいとこだぜ。)
「・・・分かったよ。好きなように呼んでくれ、政宗。」
頬杖をついて落とした箸を拾い、元親は溜息をつきながら言った。
「話が分かる奴は好きだぜ。チカ。」
「あんた絶対面白がってるだろ?もうこの話は終いだ!折角のご馳走が不味くなるぜ。」
ふて腐れる元親を見て政宗は笑いながら酒をくいっと飲み干した。元親も負けじと酒を飲み干す。
そういえば政宗は目の前の膳に箸をつけていない。
「なぁ政宗。俺が言うのもなんだが、喰わねぇのか?」
そう聞いてくる元親に政宗は濁すように髪をガシガシと掻いた。
「Ahー・・・実は腹が減ってなくてな。まぁ、俺のことは気にすんな。」
「そうかぁ・・?悪ぃな俺ばっかり喰っちまって。」
「HA!遠慮すんな。チカのためのpartyだ。どんどん喰ってどんどん飲め。But、俺を楽しませるのが条件だけどな。」
「へいへい、そういう約束だもんな。まぁ、ぱーりー?の後に政宗を楽しませるからよ。」
「OK,got it.楽しみにしてるぜ。ただしあんまりつまらねぇと龍の逆鱗に触れるぜ?」

(逆鱗・・・か。触れるかもなぁ。)
元親は笑いながらそんな事を考えていた。

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