第十四話


「佐助。」


力なく横たわる政宗を見下ろしながら幸村はそこにいるはずのない名を呼んだ。
すると上から黒い影が音もなく幸村の背後に降り立つ。

「・・・お呼びで?」

声を発した影は任務で上田を離れたはずの猿飛佐助だった。

「首尾良うか?」

いまだ繋がったままの政宗を見つめ、汗で張り付いている前髪をそっと掻き分ける。
睫毛が一瞬震えたがその隻眼が開けられることはなかった。
佐助は溜息混じりに口を開く。

「そりゃあもう今回は本番ですからね。いつも以上にお仕事頑張りましたよ。」

そう言って、懐から紙束を出しヒラヒラと動かした。

「ご苦労。お前の働きのお陰で政宗殿は満足されたようだ。」

意識のない政宗の唇を親指でなぞる。
そこはしっとりと適度に潤んでおり、幸村の肌に吸い付いてくるようだった。
欲しいものを手に入れたという高揚感が後ろに控えている佐助にも伝わってくる。

「独眼竜も旦那がこんなに用意周到な人だとは思ってないだろうねぇ〜。」
「それは俺が政宗殿のことをそれだけ想っているからこそだ。お慕いしている人に喜んでもらえるよう努力するのは当然の事。」

政宗の手の甲に口付けを落としながら幸村はそう言った。
その様子に佐助はうんざり、といった感じで肩を落とす。

「ま、俺様の努力にも免じて少しは給料上げてよね。」
「フ・・そうだな・・・。考えておこう。」

よろしく、という声と共に佐助は幸村の自室から姿を消した。

佐助がいた場所には何やら文字が書かれている紙束ときれいに畳まれた布が置かれていた。
文句は言えども命じた事は必ず遂行する優秀な忍だ、と幸村は思う。
佐助が置いていった紙束を取り、パラパラと目を通した。
そこには閨の最中、政宗の反応に関して事細かに記されていた。
幸村が口付けをしたところから最後に果てるまでだ。
一通り目を通すと幸村は満足そうに笑みをこぼす。
こういうふうに政宗に関して佐助に命じたことは実は初めてではなかった。

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