第九話
「??!!」
背中に少し痛いくらいの衝撃が走る。
呆気に取られた政宗の上に誰かがのし掛かった。
「如何されましたか?政宗殿。」
よく通る声でそう呼びかけられる。
それは先程まですやすやと寝息を立てていた幸村だった。
幸村は政宗の手を素早く引き、布団の上に組み敷いたのだ。
「起きて・・やがったのか。」
政宗はくやしそうに顔を歪ませる。
「いえ・・・無意識に体が動いてしまった故、お許し下され。」
「HA・・・そうかい・・・。」
特に抵抗する訳でもなく、政宗は微笑する。
すると突然幸村は顔を近付けてきた。
「なっ・・・!」
「このような時間に何か御用でござるか?」
幸村の吐息が顔に掛かる。
流石の政宗もこれには少し焦り、つい口から本音が出てしまった。
「俺はアンタを手籠めに・・・・と・・・Ah−・・・」
バツが悪そうな顔で政宗は視線を逸らす。
「手籠め・・でござるか。某を。」
「フン。まぁ、不発に終わったけどな。・・・それより、もういいだろ?いい加減どけよ。」
そう促す政宗だが、幸村は一向に動く気配は無かった。
自分の顔を一心に見つめてくる熱い眼に、体温が徐々に上がるのを感じた。
「おい」
「そのような事をおっしゃるとは・・・某、我慢ができませぬ。」
「は・・・・?」
幸村の瞳が怪しく光ったかと思うと、熱く柔らかい感触が唇を覆う。
「??!!」
まさかこんな行動に出てくるとも思ってもみなかった。
完全に不意打ちだったので、政宗の唇はあっけなく開かされる。
難なく進入した舌は政宗の舌を絡め取り、味合うように這う。
舌だけでは飽き足らず歯列をなぞり、口内の横壁までにも舌をのばす。
政宗は心底驚いていた。
勝手に純朴で何も知らないと思っていた幸村が、全身が蕩けそうなほどの口付けをしてくるとは想像もしていなかったのだ。
激しくもあるが決して荒っぽさは無く、全身で求められていることがありありと分かった。
そう感じただけで気をやられそうな感覚に陥った。
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