第一話

最近の俺はおかしい─。ような気がする。

何がおかしいって、気が付くとあいつの事を考えているからだ。
そいつは妖艶でもなく可憐でもない。そもそも女じゃない。
おまけに声が大きく、暑っ苦しいし、何かにつけて主君を崇める。
そんなうるさい輩は御免被りたいのだが、なぜかそいつだけはそうは思わない。
寧ろ今度はいつ顔を見られるだろうか、などと考えている始末だ。
お陰で政務にも鍛錬にも身が入らず、溜息を吐くことが多くなった。

「はぁ・・・・・・・。」



そんな主の姿を見て小十郎はただならぬ危機感を覚える。
何をしていても心ここにあらずで、軍議中でも上の空である。
他の家臣達も薄々気付いているようで、この前その事について立ち話をしているのを聞いた。

「筆頭、最近おかしくねぇか?」
「ああ。なーんか遠くの方を見ては溜息吐いているよなぁ。」
「もしかして・・・恋!・・・とか?」
「えええっ?!・・・まぁ、でもあり得るよな。筆頭もお年頃だし・・・。」


―恋。


そうか、そういうことか。
なぜ気付かなかったのだろう。ならば一連の様子も合点がいく。
なんだか前田の風来坊が飛んで来そうな話題だな、と思い小十郎は微笑した。
しかし、主の周りにそれらしき女子はいたであろうか?
見事に男だらけの伊達軍には女子は僅かしかいない。
しかも政宗と顔を合わせる者はいないはずだ。
いや、夜伽の相手がいたか。しかし、主が相手にするとは考えにくい。
その辺は割り切っているに違いないからだ。

「・・・・・・・。」

眉間の皺をさらに寄せて、小十郎は深く考え込んだ。
幼少の頃から守り役として政宗の成長を見守ってきた小十郎には、その相手が気になって仕方がない。
なんだか保護者になったような気分でもある。
無礼ではあるが少し探りを入れてみる事にした。

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