第十一話

政宗の魅力にあてられた幸村は様々な欲が出てきていた。これが思春期男の性なのか。

そして普段からは到底想像できないような事を口に出す。


「政宗殿。」
「な、なんだよ・・。」

少し幸村の目の色が変わったように思え、政宗は少し狼狽えた。



「某、貴殿を抱きとうござる。」
「は?」



突然の発言に政宗は素っ頓狂な声を上げてしまう。
ついでに持っていた猪口も落としてしまった。ふくらはぎの辺りに落としたらしく、冷たい感触が伝う。
だが、それどころでななかった。
よもや、幸村の口から「抱く」という言葉が出るなどとは。
いや、もしかしたらそっちの意味ではないかもしれない。
などと政宗は考え、念のために幸村に問うてみる。

「抱きたい・・・ってアンタ、どっちの事を言ってるんだ?」
「・・・?どちらの事とは・・・ああ、そういう意味でござるか。もちろん睦み合うほうでござる。」

政宗が予想していた方とは反対の言葉が返ってきた。

「睦み合う・・・って、アンタ、普段と違わねぇか?」

以前、軍神に仕えている忍を一目見ただけで、「破廉恥なぁぁぁ!」と喚いていたのを見たことがある。
てっきりそっちのほうは得意ではないと政宗は思っていた。

「・・・そう・・ですな。いつもは色恋、色事などの話はほとほと駄目なのでござるが・・・。今宵はどうしたことか、そのような事より政宗殿に触れ、政宗殿を全身で感じたいのでござる。」

そんな事を面と向かってはっきり言われた。しかも、至極真面目な顔で。


(こいつは何にでも真っ直ぐ突っ込んでくるTypeなんだな。)


まどろっこしく取り繕ってくるのは好まない政宗は、幸村のように素直に気持ちを伝えてきてくれるのが正直嬉しく感じた。


「I'm not strict・・・.」
「?何と?」
「アンタのそういう所に俺は惹かれたんだな。」


政宗は幸村に近付き、お互いの息が掛かるほどの距離に座る。微かに幸村の体が震えた。
間近で両者の視線がぶつかる。

「いいぜ、俺に触れてみろよ。」

政宗は自分の襟に手を掛けると、胸元をはだけさせた。
白い肌が月光に照らされ、幸村は思わず息を呑む。
いつもは分厚い甲冑で覆われているそこは、惜しげもなく晒され、何とも言い難い色香を放っていた。


「失礼・・・いたす。」


少しだけ震える手を政宗の胸に当てる。
先程は着物越しだったが、今は直接触れており、生々しい感覚が手の平から伝わってきた。
筋肉質だが肌の表面は柔らかく、手の平に吸い付いてくるようだ。
幸村はその感覚に酔い、両手で政宗の脇腹をさする。

「・・おい、くすぐってぇよ・・。」

幸村の手から逃げるように、少し身をよじる。しかし、幸村は政宗の腰に手を掛け、強引に引き寄せた。

「・・・もっと触らせてくだされ、政宗殿。」

熱の籠もった声で囁かれ、政宗の体が少し震える。
幸村の首に手を廻し、負けじと囁いた。

「Don't rush.時間はたっぷりある。」

ゆっくりと唇を近付け、重ねる。
それはこの身が溶けるほど熱いものだった。

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