第十八話
「よお、片倉さん。」
「・・・・・・・」
元親が声を掛けるが小十郎は何も答えず、咥えていたものを地面に置いた。
「・・・何だ?」
小十郎が置いた物は文と綺麗な刺繍が施された巾着だった。
「これは・・・政宗から・・・っておい!!」
渡した物を手に取るのを確認すると、小十郎は森の奥にさっさと走り去ってしまった。
「なんなんだよ。ったく・・・。」
色々聞きたい事が山程あったが、おそらく追いかけても到底追いつけないだろう。
元親は追うのをあきらめて、渡された文を開いた。
そこには達筆な字でこう書かれていた。
『チカの事気に入ったから龍玉をやる。こいつを使っていつでも龍の住処に来てもいいぜ。』
巾着を開けると天色の玉がころん、と転がってきた。
「こりゃ・・・また綺麗だな・・・。」
しかし、文には肝心の龍玉の使い方が書いていない。
自分で考えろ、という事らしい。
「ほー、綺麗なお宝ですね〜!」
いつの間にか野郎共が後ろから覗き込んでいる。
「兄貴、さっきの狼に恩でも売ったんですかい?」
(・・・恩、か。まぁ、そうかもな。)
「兄貴?」
少し笑って龍玉を見つめる元親に野郎共が不思議そうに声を掛ける。
「いや、何でもねぇよ。さぁ!野郎共!富嶽に帰るぜ!!」
「分かりやした!兄貴ー!!!」
元親はいつか政宗に会えることを心待ちにして奥州を後にした。
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