何度でもどこまでも1


以前pixivにあげた「ちょっとした設定」の長編版です
行き当たりばったりで最後もどうするか全く決めてません
更新もめちゃくちゃ遅いと思います
それでもおkって人はどーぞっ↓↓

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ぱぁん

乾いた音が響いた
目の前に散る赤い液体
どさりと何かが倒れる音
倒れている赤く染まった何か
それは自分にとって何よりも大切な人
愛すべき最愛の人
「篤さんっ!?……嫌ぁぁぁっ!」

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「笠原さんっ!堂上は!?」
病院の集中治療室の前のベンチで放心していた郁に声をかけたのはもう一人の上官である小牧
「…こ…まき…きょう…かん」
とても物を話せる状態じゃない
だが報告をしなくてはと立ち上がろうとした郁を小牧は押し留めもう一度同じ質問を繰り返した
「……堂上はどうなったの?どうしてああなった?」
その口調は郁を落ち着けると同時に自分も落ち着けようとしている風に見えた

郁の説明をかいつまみ分かりやすくするとこうだ

その日、郁と堂上は二人で日用品を買うために出掛けようとしていた
だかそこに堂上の予約していた本が返却されたと図書館から連絡があった
せっかくの公休だし早めに取りに行った方がいいと言う郁の提案に堂上も同意し二人で図書館に向かった
だがそこで事件が起こった
図書館の方が騒がしいことに気づいた二人は急いで騒ぎのある方へ走った
そこには良化法賛同団体と思われる集団が入り口で騒ぎを起こしていた
防衛員達が騒ぎを収めようとしていたが彼らは民間人で手を出してきている訳ではなかったので図書館側も手荒く追い払えなかった
その時郁は図書館に向かい罵詈雑言を吐く賛同団体の中に不審な動きをする男を捉えた
その男は少しずつ図書館内へ入ろうとしている
このままでは利用者に被害が及ぶかもしれない
そう考えた郁はその男だけでも止めなくては!と堂上に一言おいて走り出した
郁が突然走りだし一瞬反応が遅れた堂上は止めることが出来なかった
そして直後郁を追って走った
一方不審な男は郁がすごい勢いで走ってくることに気づき焦った
そしてポケットに突っ込まれていた手から拳銃を取り出した
銃口が郁の方を向き郁の走るスピードが緩む
そこに堂上が追い付いたところで発砲
銃弾が堂上の体を貫いた

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「私が……もっと慎重に動けていれば、篤さんは…怪我しなかったのに」
郁の悲痛な声に小牧はなにも言ってあげられなかった
二人の間の沈黙を破るように慌ただしい足音が響く
「堂上二正は!?」
息を切らせて駆けてきたのは手塚と柴崎
「笠原っ!大丈夫?」
柴崎が隣に来て手を握ってくれる
「私は…平気……でも篤さんが…」
虚ろな目をして手術室を見つめる郁を皆黙っているしかなかった


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どれだけ黙っていたかわからない
けれどかなり時間はたっていて…
少し郁を休ませないといけないかもしれないと小牧が立ち上がったときだった
手術中というランプが消え、中から医師が出てきた
「……!!あ、篤さんは!?」
医師から発せられた言葉はこの場の誰もが聞きたいものではなかった

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ベッドの上で眠る愛すべき人
その顔はどこか晴れやかで、スッキリしていて
「篤さん…ね、起きて?明日もお仕事だよ?」
「今日のご飯何にする?」
「ほら、まだ買い物行ってないよ!」
「ねぇ……篤さん……ねぇってば!!返事してよ!」
返事をしてくれないことに、握ったその手がいつものような暖かさを持っていないことにショックを受けた
冷えきった手を頭にやりポンポンしてみても全然元気になれなくて
認めたくない現実が胸に強くのしかかった
目の前が暗くなって足に力が入らない
「笠原さんっ!」
倒れこみそうな体を支えたのは小牧だった
郁の顔には生気がなくいつもの快活さなどまるでない
「だいじょうぶ…です……」
大丈夫な訳ないのに笑顔を作ろうとするその様子に誰もが目をそらした

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堂上と過ごせる最後の時
小牧たちは席をはずしてくれた
これが終われば堂上は霊安室にいれられてしまう
「篤さん…」
眠っているようですぐにでも目を覚ましてくれそう
ほんとにそんな表現がぴったり来るような顔
「…どうして……なんでよ…」
か細い郁の声が病室に響いた

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