21
「ふわぁ〜。あれ?山本は?」
今日から匣を使った修行に入る。
夕翡は目じりから涙を流しながら訓練室に入っていった。
既に、全員集まって・・・いや、山本だけいない。
「山本なら、スクアーロに連れて行かれたよ」
「ふーん。ていうか、昨日何かあった?」
「何か
「お前には聞いてない」・・・・」
「10代目の匣がちょっとな。お前・・気付かなかったのかよ」
「全然。なんだ、結局暴走」
「? ってことで始めるぞ。まず沢田綱吉!お前から修行内容を言っとく。お前は正しく開匣出来るまで一人だ」
「・・・・・一人?」
「あぁ。一人といっても匣兵器と一緒だぜ。匣にトラブルが起きた時は使い手が一緒にいてやることだ」
「昨日の私なんか、匣兵器に逃げられたのに」
「はは!次にクローム髑髏。お前は匣兵器強化のためにも六道骸と修行だ。格闘能力アップについてはビアキとイーピンに手伝ってもらう」
「・・・・・え・・」
クロームは不安そうに2人を見た。
格闘アップだけなら骸だけで十分だが、2人を使うのはディーノなりに打ち解けて欲しいからなのだろう。
ビアンキとイーピンはにっこり笑っているが、それで安心できるわけでもない・・。
「大丈夫だよ。頑張れ!」
「夕翡・・・・うん」
「獄寺隼人、お前は・・・修行か?」
「なっ!!」
「自分で出来んだろ?」
「あったりめーだ!!」
「よし!最後に夕翡」
「私も修行するの?」
「あぁ。お前の場合・・雪属性の炎を使いこなせるようにして欲しいところだが・・・」
ディーノは言葉を濁した。
夕翡自身も雪属性の炎を出そうと特訓してはいるのだが・・・・・
コツが掴めないというか、何かが足りないというか。
「わかんねーからなぁ」
「ディーノの知ってる私はどうやって雪属性の炎を使えてたの?」
「さぁな。俺と会ったときには使えてたんだ。一ついうなら・・吹っ切れたような・・明るくなったつーか」
「・・・今のあなたには無理だと思います」
「そう?じゃぁ、他の属性の炎を使いこなせるようにするかー!あと、ごっきゅんとかツナの手伝い?」
「そうしてくれ」
夕翡の場合、修行することがないのが問題・・・いや、その気がないというか。
雪属性の炎が今の自分に使いこなせないことはなんとなくわかる。
超直感なのか・・・
いつの間にか、それぞれが修行にいき残っているのはツナと夕翡になった。
「んまぁ、ツナの場合は早くわかってくれ。早くナッツに会いたい!!」
「ナッツ?」
「そう。匣兵器の名前はナッツね!!ナッツだよ!!わかった??」
「はいはい。いいんじゃない?ナッツ」
「それでね、ナッツはすごくいい子なんだよ。超可愛いから!!」
「・・・・昨日は俺を殺そうとしたけど・・・」
「ふふ♪あれだよ、軽いスキンシップ」
「んなわけあるか」
手の中でカタカタ揺れる匣。ツナははぁぁぁと溜息をついた。
どうすればいいかわからない。いや、どう扱っていいかわからないというべきか。
夕翡は簡単に自分の匣を扱えているのに・・・情けない。
そんなことを考えていると、だんだん気分が暗く沈んでいった。
「ツナ、大事なのは気持ちだよ」
「・・・・・気持ち?」
「そう。ナッツに対する気持ち。ペットとかでも、初めては緊張するでしょ?同じだよ」
「・・・・」
「知ってる?動物って、そういう飼い主の心情に敏感なんだって」
「飼い主の・・心情に・・」
「ツナが仲良くしたいって思うなら、ナッツだってそう思ってくれるんじゃない?」
そういうことを、考えたことがなかった。
ナッツ(もう既に定着)がどんなものかわからないから・・自然と武器って考えてしまったのかもしれない。
でも、違うんだ。
ナッツは・・・大切な仲間(名前付けるってことは動物だろうし)
戦うとか以前に・・・・仲良くなりたい。
「そんなこと・・・考えてなかったなぁ・・」
「まぁ、状況が状況だしね」
「でも、そうだよな。うん」
「開匣、してみれば?」
「でも・・・・・」
「自信を持って!」
不安な気持ちはある。それでも、夕翡のいう通り・・・仲良くしたいとは思う。
すると、なんだか・・・一気に気持ちが軽くなって
ナッツも同じ気持ちなんじゃないかって。
ツナは炎を灯し開匣した。
「ガゥ」
「ら・・ライオン?」
「ナッツっっーー!!」
「プギャッ!!」
「潰れてる!!ナッツ潰れてるから!!」
「おおと。これがナッツ。ツナの匣兵器だよ」
夕翡がナッツを下ろすと、震えながらナッツはツナを見上げていた。
なんていうか、うん。ダメツナだった俺にそっくり。そんなことを思いながら
ツナはゆっくりとナッツに手を伸ばした。
「ガゥガゥ」
「・・・・可愛い」
「ね?」
「夕翡・・・ありがと」
「ツナー!!やっぱ好き!!」
「ちょっ!!」
[ 91/100 ][前へ] [次へ]
[main][top][back]