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「へぇぇ〜。これが遊園地・・・」

「そう。何から乗る?」

「な、なにから??えぇ〜と・・・」



手に持ったパンフレットを見ながら、ツナは目を輝かせた。

目の前に広がるアトラクションは、どれも吸血鬼の敷地ないにはない。

城から滅多に出ないツナにとっては、どれもこれも好奇心がうずくものだった。



「どれがいいの?」

「そうだなぁ。やっぱり一番最初はジェットコースターだよ!」

「じぇっ・・・ジェットコースター?」

「ほら、あれあれ。」



にっこりと笑って、咲はこの遊園地で一番人気のジェットコースターを指差した。

ぐるんぐるん一回転し、絶叫がジェットコースターから響き渡ってくる。

その光景はツナは顔を蒼くし、一歩後ろに引く。



「楽しそうだよね〜!乗ってみたいのに、私の皆そういう絶叫系弱くて。」

「ぜ、絶叫系・・・・」

「ツナ、そういうのいける??」

「や、俺は・・・」



どう考えても無理ッ!!、といいたかったツナだが、きらきら目を輝かせている咲に何もいえなかった。

手を引かれるまま・・・ジェットコースターに乗る。



「楽しみっ。どうなるのかな〜。」

「そ、そう・・・?」

「うんっ。落ちるスリル感がたまらない!なのに誰も乗れないとか・・・魔払いの癖に情けないと思わない?」

「俺からはなんとも・・・」



カタン カタン


少しずつ角度があがっていく乗り物に、ツナは汗だくだくだった。

レバーを握る手が汗で滑る。

指先から体全体が冷えていって・・・


ガタンッ!


一気に体中から血の気が引いていった。



ぎゃやぁぁああああああ!!!

きゃっぁああああああ!!

「無理無理無理ー!!ぎゃあああ!!」

「ひゃーひゃーきゃー!!いっけー!!」



キキーッ!


猛スピードで落ちたり上ったり、その反動で一回転したり

ツナが悲鳴をあげないことはなかった。

怖くないように、と外を見ずに必死に足元に顔をやり目を瞑るけれど・・・

それでも泣きたくなるくらい怖かった。



「っ・・うっっぐ・・・ひっく・・・」

「た、楽しかった〜!!」

「嘘ぉ!?」

「ね!ね!もう一回!もう一回行こう!

「無理無理!!もーやだ!!あんな怖いの無理ぃいい!!」

「むー。」



ツナは耳を塞ぎ、その場にしゃがみこんだ。

通りがかりの子供がクスクス笑っているのに恥ずかしくないのか、と咲はいってやりたかった。

が、今のツナは何があってもジェットコースターには乗りたくないようだ。



「じゃぁ、次は・・・・」

「咲ちゃん?うわっ!!

「しっ!」



咲は急にツナの手を引いて走り出した。

ツナは驚き顔で、咲につれられるがまま走る。

・・・何度か転びそうにもなりながら必死でついていった。

咲はそんなツナを着にかける余裕はない用で、キョロキョロと何かを探している。


そして、怯えるツナをよそに、真っ暗なお店の中に入っていった。

俗に言う"お化け屋敷"に。



「はぁっ・・・はぁっ・・・どうしたの?急に・・・。」

「・・・(あれくらいで息切れするって・・・)魔の気配がした。」

「えっ!」

「微妙にだけど。吸血鬼ではない・・・。でも、魔がこんなところにいるはずないから・・・ツナ狙いだと思う。」

「っっ!!」



ツナは苦しそうに顔を歪めた。

自分のせいで他の誰かが傷つくほど嫌なことはない。

なにより、自分にはそんな誰かを守る術さえないのだから。



「おい!どこいった!!」

「この中にはいったはずじゃねぇのか!?」

「探せ!!」



しばらく隅の方でじっとしていると、男性の焦ったような声が聞こえた。

咲の予想は当たったようだ。

男達は、疑いもせずお化け屋敷の奥へと進んで行く。



「は・・・よかったぁ。・・・咲ちゃん?」

「え、あぁ。うん。」

「なんか顔色悪いよ?」

「・・・ちょ、ちょっと抱きしめていい?」

「は、え!?


「呪い殺してやるー!!」
「ケケケケケケッ」




遠くの方から聞こえた機械の声に、小さく咲の体が揺れ、小さく悲鳴をあげたかと思えば

ツナの返事を待たずして抱きしめた。

ツナは顔を真っ赤に染め、あわあわと混乱してしまう。



「も、もしかして・・・こういうの駄目なの?」

「っ!!平気なわけないっ!」

「で、でも・・・魔払いなんだよね?こんな魔物、ごまんと見てるんじゃ・・」



実際、ここにいるのは現実にいる魔物の模倣品ばかりだ。

見た目は怖いが、本物からすればさっきも邪気もとてつもなく低くてツナは怖いなんてまったく感じない。

だが、咲は正反対でガタガタ怯え強くツナに抱きついている。

・・・この状態で 体が痛い なんてさすがにツナはいえなかった。



「・・・なんか、血の匂い。」

「血・・・いやぁぁあああああ!!」

ぐぶっ!

「食べられる!!お化けに食べられるー!!!」

「咲ちゃん!?落ち着いて!!(胸が当たる!!)」



きつく顔を腕で閉められ、ツナはもがいた。

だが、咲は混乱しているのかツナを離さなかった。

しばらくすると、不気味なほど静かになり・・・咲はやっとツナを開放した。



「ご・・・ごめん・・・。」

「大丈夫?」

「うん・・・。ほんと、何でお化け屋敷になんて入っちゃったんだろ。ツナが怖くないなんて酷いっ。」

「いやだって、全然邪気はないし。」

「そ、そうだけど・・・。だから怖いんじゃない!」

「・・・へ?」

「機械が壊れて突然襲ってきたりしたら!?あんな大きいのがおっこって来たらいくら私でも壊せないよ!?ていうか壊したりしたら弁償金をせしめられるんだー!!」

「え、えぇ・・(なんか怖がるところおかしくない!?)」

「ひっくっ・・・ごめん、ツナ。怖くてここから動きたくないっ・・・」

「咲ちゃん・・・・

 そんなに怖いなら慰めてあげようか?



突然声の調子が変わった。

今までぎりぎりまでツナにくっついていた咲はぎりぎりまでツナから離れた。

とはいっても、あまり離れすぎると怖いので30cmほど離れただけだ。

顔はこれまでにないほど嫌そうなのに、離れられない咲をツナはククッと笑う。



「な、なんで出てきてんの!?今、夜じゃないのに!」

「ここ、太陽の光ないから。」

「ぬ、ぬかった!やっぱりお化け屋敷なんて嫌いっ。」

「なんで?」

「えっ。」

「さっき綱吉にいった理由じゃないだろ?まぁ、それもあるんだろうけど、本当の理由は違うんだろ?」



にやりと、愉しむようにツナは笑った。

その、何でも見透かしたような笑みに咲は顔をしかめる。

だが、後ろのほうから少しずつ聞こえる物音に・・・体は少しずつツナのほうによっていた。



「あんたには・・・関係ない。」

「まぁね。ていうか、何で出てきたのよ。」

「ん?暇だったから。」

「寝てればいいじゃない。これで外に出たりなんかしたら誤魔化すのが大変だから早く消えてよ。」

「酷い言いよう。」

「早く戻らないと、消すよ。」



脅しじゃない、とばかりに掌に気を集めるが・・・

ガタッ



「ひっ!!」

「ククッ。そんな物音一つで怯えているようで俺を消すって?」

「っっ!!」

「ま、いいけど。あいつらは俺を狙ってるよ。対抗出来そう?」



小馬鹿にするようにツナは笑った。

まるで、人間の小娘にはできないとでもいいたげだ。

その目が気に入らず、顔をしかめながら咲はハッキリといった。



「当然でしょ。」

「インクブスかもしれないよ?」

「夢魔のこと?寝ている間に来るんだったら平気よ。すぐ追い払うわ。大体、いちいちそんなこと気にしてたらこの職業やってられない。」

「ふぅん?」

「私は、結構強いから。そういう試すようないい方止めてくれる?」



ムスッとしながら咲はツナを睨みつけた。

目が悪趣味、と言っている。

そんな咲にツナは仕方ない、と肩をすくめた。



「性格、だよ。あいつらはレッドキャップかな?凶暴だけどそうそう強いわけじゃないけどこらえ性がないから・・・人間が襲われるかもね〜。」

「なんだ。逃げなくてもよかった。」



咲はゆっくりと立ち上がった。

その手にはいつの間にかロザリオが握られていて、神経が張り詰められている。


ガタッ



ぎゃぁぁぁああああああ!!!

「うるっさ。」

「いやぁぁあああ!!何何!?!?」

「黙らないとその口塞ぐよ?もちろん俺の口で。」

己が黙れ、この変態!!

「えっ、えぇぇええ!?!?あ、あの、なんかスイマセン!!俺なんかした!?」

「え?ううん、全然!」



にっこりと咲は笑ってみせた。

と言っても、それは到底笑っているようには見えず、普通に怒るよりも数倍怖い。

ヒクヒク顔の筋肉が引きつっていた。

それに、ツナはびくっと肩を揺らしズズズッと後ろの方まで下がる。



「(あの卑怯者!!)ご、ごめんね。いこうか・・・・・・」

「咲ちゃん大丈夫?」

「が、頑張るからっ。悲鳴あげてたらごめん。」

「う、うん。」



ひギャァアアアああ!

「咲ちゃん・・・」

「あ゛ばばばばばばばばばばば」

「ちょ・・・」

「hだfじょいあふぉぱ:fjkpだ:g@:だg@あdlがどが;gjかl」

咲ちゃんー!?



バタンッと音はしなかったものの、咲はツナの方へと倒れた。

突然のことに咲を受け止めはするものの力が足りなくて、ツナはそのまましり持ちをついてしまう。

咲は女の子としては残念なことに、よだれをたらしながら気絶していた・・・。



「・・・・こんなところで。」



しかもそれはお化け屋敷の出口だと言うのだから。

安心したからなのか耐え切れなくなったかは定かではないが、吸血鬼と比べては当然のこと、人間と比べても断然力がないツナは

咲を起き上がらせることも出来ず、管理人達に手伝われながらやっとのことで養護室に咲を運んだのだった。



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