Confession : scene.1

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『伝えたい想い』



 ロックは昼寝が好きだった。




 大きな木の下で両腕を枕にして、少し毛足の長い草原の上に仰向けに寝転がりながら雲の流れを眺める。
 そよぐ風を頬に感じ、柔らかい陽射しを浴びて、小鳥の囀る声を聞きながらまどろむ。


 至福のひとときに心が安らぐ。


 穏やかな昼下がりの中、うとうとと瞼を閉じていると、大木に青々と繁った葉と葉の擦れ合うサラサラという音に紛れて、やがて声が耳に届く。
 綺麗な音階の、耳に馴染む愛しい彼女の囁き。



 彼が昼寝が好きなのには他にも理由がある。




 それは―――…。



* * *




「ロックー!どこにいるのー? お昼の用意出来たよぉー!もう…どこ行ったのかな…」



 見当たらないロックの姿を探しながら、ティナが1人ぼやいていた。
 それをセリスが見かけて、ティナに声を掛ける。



「ティナ。どうしたの?」
「あ、セリス。あのね、ロックが見当たらないの…。ご飯の用意できたから探してたんだけど…」
「じゃあ私探してくるわ」
「え?心辺りあるの?」
「ん。何となく見当は付いてるかな」
「ほんと?さすがセリス!ロックの事なんて何でもお見通しなんだね」
「なっ…そんなんじゃないわよティナ!」



 ロックとセリスが恋仲だということは既に周知の事実だったけれど、セリスはからかうような目で見つめるティナに力いっぱい否定した。



「ふふっいいじゃないそんなに照れなくても。じゃあロック見つけたら連れて来てね」
「わかった」




 ティナに告げた通り、セリスにはロックが今何処にいるのか何となくわかっていた。

 彼は三度の飯と同じくらい寝る事が好きな男だ。
 時間が空いた時、暇を持て余した時にはたいてい寝ている事が多い。
 それはトレジャーハンターである彼にとって、寝れる時には寝ておこうという職業的観点からきている行いなのかもしれないが。




 セリスはその彼の昼寝癖をいいことに、いつも実行する事がある。




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