■■■■ sunny side
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「愛してるって…っ、どこかの王様じゃあるまいし」
「♪愛し〜の〜あなた〜は〜」
「やだもう、茶化さないでよっ」
先程の不安げな言葉は何処へやら。
あははっと心底おかしそうに笑う。
笑ってくれたのはいいけれど、ちょっと笑いすぎじゃないか?
茶化したのは自分自身だったけれど、あまりに可笑しそうに笑う彼女に自分の気持ちまで茶化された気がして。
何だか少し意地悪してやりたくなった。
「大体そんな低い声じゃ…、―――っ…?!」
心地好かったひざ枕とは一旦決別して起き上がり、今だ笑い続ける彼女の肩を後ろにとん、と押してやる。
油断していたせいか、セリスは草原の上にころんと仰向けに転がった。
そのまま細い肩を抑えつけて上から見下ろすと、そこには突然の事に驚いた表情でロックを見上げるセリスの顔。
「愛してる」
冗談ではなく、今度は本心から。
もう一度言ってやると、セリスは大きな碧の瞳を更に大きくして突然顔を桜色に染めた。
「おー。照れてる照れてる」
「…ち、違…っ!照れてなんかないわよ!ロックがイキナリ変な事言うから…っ」
「茶化すなって言ったのはセリスじゃんか」
「だからって急にそんな事…!」
恥ずかしさを打ち消すように赤い顔で喚き立てる彼女が可愛くて仕方なくて。
煩く喚くその口を自分の口で塞ぐ。
唇を割って舌先で口内をくすぐると、すっかり大人しくなった。
恥ずかしさを持て余して、やり場のない彼女の手が自分の袖口をきゅっと握るその様に、愛しさは更に募る。
「…っも、くるし…」
「ごめん、大丈夫か?」
「…大丈夫じゃない」
不服そうな彼女の顔。
「じゃあ、もっとしてやろうか?」
「…!も、もういいわよ…!」
「だって不安なんだろ?」
「え…?」
「不安だから、聞くんだろ?」
「―――…、」
返事は、返らない。
逸らされた視線は、少し寂しげに一点を見つめて揺らぐ。
「俺がおまえを好きかなんて、もう言わなくても判るくらい判りきってると思ってたけどな」
「―――…それでも…、」
―――言葉が、欲しかったから…。
緩やかな風に紛れて届いたのは、普段あまり自分の気持ちを言葉に表さないセリスの、小さな本音。
頬を紅潮させたまま、恥ずかしげに視線を彷徨わせる彼女により一層の愛しさを感じてもう一度、口づけをひとつ。
それから微笑んでみせて、彼女の上から退いてその横に仰向けになった。
心地好い風が頬を撫で、髪がさらりと靡く。
「終わったんだな、全部」
「…うん」
自然と絡み合った指。
躊躇いがちに触れてくる彼女の細い指を、強くぎゅっと握った。
「好きだよ、セリス」
「…うん…。」
好きだよ、今も。
これからも、ずっと。
不安だというなら、何時だって
言葉が欲しいなら、何度でも言うから
だから、いつでもそばで笑っていてほしい。
この先どんな事があっても、この手だけは離さないと誓うから。
この手の温もりと
胸に宿る愛しさと
ひだまりのような彼女の笑顔を
守っていきたい
これからも、この先も、ずっと…。
繋いだ手に 想いを込めて
そう誓い願った 安寧のひととき。