『sunny side』
A Tribute to SAKAMICHI.
「あーまぶしい。お天道さまの力ってすごいな、やっぱ」
瓦礫の塔がその意味を無くしてただの瓦礫と化し、同時に空を覆っていた厚い雲が流れ、代わりに久方ぶりに顔を見せた太陽。
その陽射しが、甦った草花にたっぷりと降り注いでいく。
濃い緑の葉をつけた木々は風に揺れ、その陽射しを浴びて落ちた影が、まるで切り絵のように草原に絵を描いた。
ロックはきらきらと鮮やかにきらめく草原に横たわって、清んだ空を仰ぎ見た。
背を包み込む緑の絨毯は、日の光を浴びてほのかに温かい。
「本当ね。太陽って、こんなに眩しいものだったのね」
手を翳して抜けるような青空を見上げながら、ロックの横に立ったままのセリスは目を細めて微笑んだ。
その穏やかな表情を横目で見て、ロックも笑みを零す。
穏やかに時が流れたのもつかの間、この状況になにかを閃いたロックは、横にいるセリスの手を引いた。
ロックのその笑みが企みを含んだものに変わる。
そこに宿っていたのはちょっとした悪戯心と、ちょっとした下心。
「セリス、此処に座って」
そのロックの不自然なまでの笑顔に、セリスは少し警戒する。
「…なんで」
「いーからいーから」
彼女の手を取り、少し強引に緑の絨毯に座らせる。
よく判らないまま座らされたセリスの戸惑いを余所に、ロックは少し移動してセリスに近づくと、そのまま何の断りもなく自分の頭をセリスの膝の上に預けた。
「ちょっ、何してるのよ…っ」
「いーじゃん、ひざ枕くらい」
そう言ってニッと微笑むと、セリスの柔らかなひざ枕を堪能しつつ金の髪をひと房指に絡め取り、くるくると弄んだ。
「いい景色だなー」
「そうね」
「特にこの下から見上げるおまえの胸元なんて、ホント絶景」
「……落とすわよ」
セリスが脅してみせるもロックは笑って躱し、目を閉じる事で抗議も勝手にシャットアウトする。
それを見て諦めたのか、セリスは「もう…、」と呆れた声を零しつつも、その目には優しい色合いを湛えていて。
もう一度、晴れやかな空を仰ぎ見ながらセリスはロックの髪をサラリと撫でた。
ようやく訪れた平穏。
心地よく流れる空気と風と、温かな日の光。
それを閉じた瞼越しに感じ、ゆるやかな時間の流れに揺蕩いながらまどろんでいると、セリスの温かな手の平がロックの瞼にそっと置かれ、閉じていた視界を更に遮った。
「ねぇ、ロック」
窺うような、少し遠慮がちな、彼女の声。
「ん?」
「……」
「どした?」
「………、」
「セリス?」
「―――好き…?」
今にも消え入りそうな不安げな声で、少しの沈黙の後、セリスの言葉はぽつりと落ちてきた。
なにが?なんて問わなくても、聞かれた事の趣旨は容易に知れた。
「好きだよ」
こんな言葉で、彼女の不安が埋まるかなんて判らないけれど。
「好きだ。愛してる。」
「………」
「セリスが好きだー、愛してるー」
「……、ふふっ」
冗談めかしてそう言うと、ロックの視界を塞いでいた手を外して今度は自分の口元を覆い、緊張が解けたように顔を綻ばせた。