ほしいものはひとつだけ

7






「ねぇ、誕生日のプレゼント…」



 腕の中のセリスが、おもむろにポツリと言葉を零した。
 くぐもった声に少しだけ、緊張が入り混じっている。



「…え?」

「ほんとに…、私でいいの…?」



 言葉を選ぶように、ゆっくりと紡がれた疑問符。
 顔は上げず、俯いたまま躊躇いがちにそんな事を聞くセリスに、



「それは…、」



 たった今もらったから。
 欲しいものは全て、この腕の中にあるから。
 だからもう、欲しいものは何もない。


 …そう答えようとしたけれど。


 言ってしまった後で尋ねた事を後悔したのか、耳まで朱色に染めて俯きながら返事を待つ、普段と掛け離れたセリスの姿があまりにも…可愛いすぎて。

 俺はそれ以上言葉を続けられずに、思わず吹き出してしまった。そして、



「〜〜〜!あーもー無理!」

「――え…、ロック…?…――キャッ!」



 俺は苦笑を押し殺しながら、そのままセリスの腕を取り、もう一度シーツに縫いつけた。
 








 なぁ。

 本当に自覚してくれ、頼むから。




 そういう無自覚な言葉で、仕草で俺を煽るんだって事。




 もう十分、なんて思ったけれど。
 そんな表情でそんな事を言われたら、それ以上を望んで欲張ってしまうのは当然だろ?




 この状況で、寸止めなんて有り得ない。
 流石にそろそろ我慢も限界だし。
 俺を煽った事を、後悔してももう遅い。

 だから、






「言っただろ?俺が欲しいものは、セリスだけだって」






 少し早いけれど、俺は今すぐ貰う事にした。


 どんな秘宝も霞んで見える程の





 腕の中の、この世に二つとない最高の誕生日プレゼントを―――…。







end.

(2011.03.04)



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