■■■■ ほしいものはひとつだけ
7
*
「ねぇ、誕生日のプレゼント…」
腕の中のセリスが、おもむろにポツリと言葉を零した。
くぐもった声に少しだけ、緊張が入り混じっている。
「…え?」
「ほんとに…、私でいいの…?」
言葉を選ぶように、ゆっくりと紡がれた疑問符。
顔は上げず、俯いたまま躊躇いがちにそんな事を聞くセリスに、
「それは…、」
たった今もらったから。
欲しいものは全て、この腕の中にあるから。
だからもう、欲しいものは何もない。
…そう答えようとしたけれど。
言ってしまった後で尋ねた事を後悔したのか、耳まで朱色に染めて俯きながら返事を待つ、普段と掛け離れたセリスの姿があまりにも…可愛いすぎて。
俺はそれ以上言葉を続けられずに、思わず吹き出してしまった。そして、
「〜〜〜!あーもー無理!」
「――え…、ロック…?…――キャッ!」
俺は苦笑を押し殺しながら、そのままセリスの腕を取り、もう一度シーツに縫いつけた。
なぁ。
本当に自覚してくれ、頼むから。
そういう無自覚な言葉で、仕草で俺を煽るんだって事。
もう十分、なんて思ったけれど。
そんな表情でそんな事を言われたら、それ以上を望んで欲張ってしまうのは当然だろ?
この状況で、寸止めなんて有り得ない。
流石にそろそろ我慢も限界だし。
俺を煽った事を、後悔してももう遅い。
だから、
「言っただろ?俺が欲しいものは、セリスだけだって」
少し早いけれど、俺は今すぐ貰う事にした。
どんな秘宝も霞んで見える程の
腕の中の、この世に二つとない最高の誕生日プレゼントを―――…。
end.
(2011.03.04)