戦場のメリークリスマス

7



 
 リネームカード。

 それはキャラの名前を変える事が出来るという、
 法律も戸籍も完全無視の究極の非売品アイテム。





 ―――ど、どういうつもりでコレを俺に…?





 あからさまに戸惑いをあらわにしてセリスを見遣った。
 彼女はニッコリと微笑んで告げる。



「私はね、『ラグナロック』って名前がいいと思うの」

「……は?」

「それね、コロシアムでこの前手に入れたんだけど『ラグナロック』っていい名前じゃない?
魔石の名前だったけど剣に変えてラグナロクになっちゃったでしょ?
せっかくカッコイイ名前だったんだしぃ〜『ロック』って名前も入ってるしぃ〜私この名前がいいな〜なんて!」



 キャハハハ!と、実に楽しげに笑うセリス。
 ロックは開いた口が塞がらず、そんな彼女を呆然と見つめていた。





 俺があげたのは…頭にリボンまでつけて屈辱に耐え、
 死ぬ思いをして得た英雄の盾…




 なのに彼女は俺に名前を変えろとリネームカードをプレゼント…






 俺の…俺の努力って一体……






 それに俺に対する彼女の気持ちって一体…… …… ……







「なぁんちゃって!今のは冗談よ冗談☆本物のプレゼントは……
じゃーん!ロックのネーム入りのマフラ−よ夜なべして作った………
ってキャー!ロック!?どうしたの!ロックってば!しっかりしてぇ〜!」



 セリスが冗談だと言って後ろを向き、本物のプレゼントを取り出してロックに向き直った時には…
 もう既にロックの魂は身体から抜け出て宙を漂い始めていた。







 その様を陰ながら密かに見ていたパーティ一同。
 面白いものが見れると踏んだ一同は、変装して他の客に紛れていたのだった。
 目も当てられない彼に、一同は呟きを零した。





「嗚呼、哀れな男…」





 ……ロック青年の空回りの愛は、今後も暫く続きそうだ。








チャンチャン。

(2008.12.25)




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